ミクロマン -G線上のアリア-

これはミクロマンの、長い長い物語の、あまたある物語のうちの、ほんのひとつにしか過ぎない。

はじめに・目次

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ミクロマン ーG線上のアリア

作●学級新聞・編集長ーj

 

【はじめに】

この物語はかつてタカラ(現タカラトミー)から発売されていた“ミクロマン”と言うシリーズの玩具やそれらに与えられていた設定の一部を参考に、私が考え出した創作物語です。幼少時代から大好きだったミクロマン。自分の中で昔から今に至るまでに作っていたミクロマンが活躍する“脳内に暖めていた想像話”をひとまとめにして文章化できればと書き出した「僕の考えたオリジナルのミクロマンストーリー」なのです。

描かれる物語の設定は、本家に準拠しているところもあれば、矛盾しているところもあり、独自に付け加えた部分もある、というごちゃ混ぜ二次創作あるある準拠となっています。登場人物は想像上の人たちですし、実在する場所や出来事などがところどころ出て来るかも知れませんが、語られているすべてはフィクション、すべて架空のものであり、実在するそれらとは一切関係がありません。

2021年時点では、本家メーカーさんのミクロマンシリーズは長いお休み状態にありますが、自分も含め、いまだに根強いファンがおり、ファン活動を続けています。他のファンの方々同様、僕もミクロマン愛で、これからもずっとミクロマンを応援し続けていきたいと思っております。ので、タカラトミーさん、令和・新ミクロマンを企画、新発売してください、お願いします。(2021年12月吉日  学級新聞・編集長-j)

 

 

【目次】

 

第1部 “復活のミクロマン 編”

オープニング

プロローグ・2021復活の日<前編>

プロローグ・2021復活の日<後編>

次回予告(1)

第1話・2011破滅の日<前編>

第1話・2011破滅の日<後編>

次回予告(2)+【登場人物&メカの紹介①】

第2話・廃墟の亡霊<前編>

第2話・廃墟の亡霊<後編>

次回予告(3)+【登場人物&メカの紹介②】

第3話・神隠しがやってくる<前編>

第3話・神隠しがやってくる<後編>

次回予告(4)+【登場人物&メカの紹介③】

第4話・新たなる使命<前編>

第4話・新たなる使命<後編>

次回予告(5)+【登場人物&メカの紹介④】

第5話・新Iwaki支部、始動!<part.1>

第5話・新Iwaki支部、始動!<part.2>

第5話・新Iwaki支部、始動!<part.3>

次回予告(6)+【登場人物&メカの紹介⑤】

 

第2部 “チェンジ!ミクロ探偵団 編”

第6話・承前、アリスの日常

オープニングⅡ

第7話・ロボットマンはもらったよ!<前編>

第7話・ロボットマンはもらったよ!<後編>

次回予告(7)+【玩具ギャラリー01&プレゼントイラスト】

 

次回予告(7)+【玩具ギャラリー01&プレゼントイラスト】

●ギャラリー01 “ミクロマン指令基地”

ミクロマンを乗せてかっこよくあそぼう」(箱絵のキャッチフレーズより)

ミクロマン指令基地は全世界にはりめぐらされたミクロマン航路(ミクロマンの飛行航路や海中航路など)の安全と対策、侵略者からの防衛のために、ミクロマン科学のすべてを結集して完成された、オペレーションセンターだ。」(同梱リーフレットの解説文から抜粋)

 

ーー物語本編で使用されている玩具を、ギャラリー方式で紹介するコーナーです。

今回は、“指令基地”。

1975年にタカラより発売された小型のミクロマン基地で、いつもはコンパクトに小さくたたむことが出来、それを広げると遊び心いっぱいのギミックが展開される仕組みになっています。

 

 

光波動ミサイル砲

 

中性子ミサイル砲

 

情報管制室

 

コンピューター操作パネル

 

チャージカプセル

 

マッハスクランダー

 

スクランブルシューター

 

 

ーーレストア模様。僕の持っているミクロマンの基地や乗り物は、中古のジャンクで入手したものを修復して再生したものが多いです。

この指令基地も、壊れて汚れ切っていました。

洗浄したり、ジョイントが折れているところを接着補強したり、壊れたギミックを修理。剥がれてきていたり、色が褪せてしまっているシールは丁寧にはがしてPCにスキャン、画像処理ソフトを駆使し再生、新しいシールシートに印刷して切り出したものを、再度貼り付けてあります。

自分で愛情込めて作り直しただけに、思い入れも強い玩具になっています。

 

 

●プレゼントイラスト

Twitterで楽しくやり取りさせていただいているAirRideさん(元 (自称)ローカルヒーローデザイナー)から、ミクロマンロボダッチのイラストをプレゼントしていただきました。大変に嬉しかったです、ありがとうございます。

無断転載禁止

無断転載禁止

 

 

胡桃ちゃんが行方不明になった。アクロイヤーの仕業に違いない!! 綾音は再びロボットマンで友達を助けに向かうのだが、どうやっても超分身を飛行させることができなかった。飛べないロボットマンで綾音はどう戦うのかーー?!

次回、『第7話・胡桃ちゃん救出大作戦!』に、君もミクロ・チェンーーージッ!

第7話・ロボットマンはもらったよ!<後編>

 

ミクロ化した綾音とお供のマグネジャガーは、一本道の奥まったところ、暗い灰色をした建物の敷地内に侵入していた。規模は一戸建て住宅くらい、左手に小さな事務所とトイレ、中央にメインとなる倉庫部分があるだけの、壁はトタン、内部は木材と鉄筋半々で作られている昔ながらの倉庫だ。正面の壊れてしまい開いた状態のままにされている黒い門をくぐると、すぐに建物の壁に取り付けられた巨大シャッターがあるのだが、ここから内部に軽トラックを入れ、漁業網の乗せ降ろしを行うのだろうことは、子供でも容易に想像できた。

しかし、どう見ても不気味な雰囲気を醸し出している場所だ。建物の壁は長い年月を経て汚れ切っており、いくつかある小さなすりガラスの窓は拭き掃除などしていないのだろう、すべて茶色い色がこびりつきより一層、曇ってしまっている。中は完璧に見えない。ほんの少しだけある庭に当たる空間は、雑草やら風で飛んで来たゴミだらけだ。門やシャッター、トタンを止めている釘、その他、鉄でできている部分は至るところ色が剥げたり錆が浮き出ていた。倉庫の持ち主らしき人物、仕事で訪れている大人は見当たらないし、確かに陽斗の情報通り、本当に今現在も使われているのかは怪しいところである。

錆びついたシャッターは一番下まできちんと閉まっていた。しかし、その左側にある事務所のドアが少しだけ開いているのが見える。ごくり、と綾音は唾を飲み込む。行き止まりの道を進んでいたのだから、少年は当然この建物に来たはずだ。しかし、人がいられる敷地内庭スペースには誰もいない。と言うことは、青いジャンバーの少年とアクロイヤーの手下は、ドアから中に入って行ったに違いないのである。

少女はジャガーの背中を軽く叩くと、ドアを指さしたのだった。

 

マグネジャガーは、極限にまで高められた超隠密能力や索敵機能を持たせられた、スパイ活動を最も得意とするアニマル型ロボットである。主人を乗せたまま、ジャガーは周囲の気配を探りながら物音ひとつ立てずに内部に潜入。雑然と物が積まれたホコリ臭い事務所の中をコッソリと横切り、センサーが動くものを感知した奥の方へと歩みを進めたのであった。事務所の奥にもうひとつのドアがあって倉庫に出入りできるようになっているようだ。そしてそこもやはり半開きになっており、ドアの奥から微かに物音が聞こえてきていたのだった。

綾音はそっとジャガーから降りるとドアの隙間から倉庫に入る。すぐ手前の大きな黄色い漁網用浮きに身を隠すと、中の様子を窺った。汚れ切っているが小さな窓がいくつかあることからも、明るいとまではいかないが外の光が入ってきており、室内はそれなりに見えている。青、緑、黄、黒、灰色と言った様々な色をした漁網がいくつもあちこちに山と盛られ置かれていた。網と共に至る所にブルー、オレンジ、イエローと言ったカラフルな色をした漁網用浮きが散乱もしている。天井には横に伸びる鉄筋の梁が何本もあり、そこに結ばれぶら下がっている網やロープも見受けられた。倉庫内空間の邪魔にならない両サイド付近には、屋根と梁を支える鉄筋の支柱がある。茶色く汚れた窓を通して入った外光のせいで、全体のトーンは茶に近いオレンジ色に染められていたのだった。

 

車を停める事情もあるのだろう、倉庫内中央は荷物が置かれていない。そのど真ん中に青いジャンバーの少年が立っているのがすぐ分かった。横顔が見えているのだが、目はうつろだ。意識がボーッとしているのか、口も半ば開きっぱなし、だらしなくしている。

名前も知らないし、話したこともないが、別のクラスの男子であると綾音はすぐ気が付いた。

周囲に置かれている漁網のせいで全貌は見えないが、少年の足元にゴチャゴチャと動くいくつもの影がある。隙間から見えるに、人体模型のような姿をしたアクロ兵と、頭蓋骨メカのアクロメカロボだ。ミクロマン達が子供部屋に回収してきた壊れてる物ではない。神隠し計画を今まさに実行中の、生きている恐るべき戦闘型アンドロイド軍団である。綾音はもう一度、唾を飲み込んだ。高鳴る心臓が外に飛び出さないようにと胸を押さえる。

ミクロマンに報告しよッ・・・!!」急いで腕時計の通信スイッチを押した。敵に気づかれぬようにと、音量は最小にして。

「・・・・・・」サーッという微かなノイズ音が走るだけで、何も起こらない。何度もスイッチを押し直してみたが、結果は同じであった。

「なんで⁈ アクロ妨害粒子のことも考えて作られた機械なんでしょ、これって⁈ 通じないはずが・・・」少女は「ハッ!」とする。先日、青スーツのマイケルが皆に伝えてきた、『この数日、どうもアクロ妨害粒子の濃度があちこちで上がってきている気がするぜ⁈』と言うパトロール報告のことを思い出したのだ。続けて、赤スーツのメイスンが以前話していた内容も思い出す。『それはいまだに、電波障害を起こす効果を発揮している、恐るべき粒子だ。本部が総力をあげ、科学的に排除を試みたが、うまくいかず、結果、ミクロマン通信機器とレーダーは、影響を最小限に抑えられる新型が開発された。100%障害をまぬがれるとは言い切れないのだが、今はそこそこ使えるその新しいものにすべてが入れ替えられ、使われてる次第だ』

新型も完璧ではないと言う。ここの妨害粒子は、新型であってしても障害をまぬがれないほどに濃度がすごく高められているのではないだろうか? 目の前にアクロイヤーがいるとなると、可能性大に思える。

まさしくいま少女が想像したり、ミクロマン達が警戒した通り、アクロイヤーは自身たちの計画をなんとしてても遂行させる為、姿を見せ始めた邪魔する敵への対処として、アクロ妨害粒子の更なる散布を数日前から徐々に敢行していたのである。

 

ミクロマンに通信できないとなると、どうすれば良いのか? 戸惑っていたところ、少年のいる方から、怪しげな動きが感じられてきた。囲むようにして位置しているアクロ軍団が、反時計回りに少年の足元をグルグルと回り出したのである。

まるで盆踊りだ。少年がやぐらで、軍団は盆踊りの踊り手。両手を上げたり下げたり、歯をカチカチとリズミカルに嚙み合わせて鳴らしたりして、おかしな踊りを舞う兵の目はボヤっとした赤い明かりを放ってもいる。薄気味悪いと言ったらない。

「あれ、この光景、どこかで見たことがあるような?」綾音は瞬間的にそう思った。記憶を探ろうとするが、興奮状態のせいか、落ち着いてうまく思い出せない。誘導され連れ去られているところを目撃したことはあるが、この様に謎の儀式にかけられている被害現場そのものを目撃したことはなかったはずだ・・・。

いや、今はそんなことを気にしている場合ではない、と即座に気持ちを切り替える。

上の方から、いきなり光線を感じ、綾音は視線を上にあげた。すると、漁網の山の上に一体のアクロメカロボがいて、額にあるサーチライトのようなものから、強めの青白い光を少年めがけて放ち始めたところだったのである。

「あの光はダメだ、あれは非常にマズイ!」と、鋭い直感が警告を発した。思わず綾音は物陰から飛び出し、叫んでいたのだった。「やめろーッ!!」と。

何の考えもなかった。ダメなものはダメなのだ。あれは子供を苦しめる悪魔の光だ。苦しめるようなことをしてはいけないのだ。

ただそれだけの想いが強く働き、本能的に飛び出してしまっていたのである――。

 

 

サーチライトが消え、アクロ軍団の踊りがピタリと止まる。侵入者の存在を知り、悪魔の盆踊り儀式は中断されたのだ。

「何者ダッチ・・・⁈」サーチライトを照らしていたアクロメカロボの陰から、群青色をした樽状のボディを持つロボットがのそりと顔を出してきた。この現場の指揮に当たっていたアクロボゼットである。漁網の山の上にいたことからも見晴らしがよく、彼は出入り口ドア付近にすぐ声の主を発見できたのだった。真っ黒いジャガー型ロボを従えているらしい、女性ミクロマンである。

綾音は、無意識とは言え自分がとんでもなく無謀な行動に出てしまったことを激しく後悔していたのだった。敵の真ん前に飛び出したことから良くわかったのだが、アクロ兵10体、アクロメカロボ2体、群青色ロボ1体、計13体のアクロ軍団小隊に宣戦布告してしまったのだ。

網の山の上で大声を張り上げる、樽みたいな姿をしたロボットがリーダー格なのだろう。そいつがアクロ兵たちに「ミクロマンを倒せ」と命令している。

綾音はアクロボゼットと修了式の日に出会っていたのだが、オモチャの落とし物を届けただけ、大したことではなかったことから、もう“すっかりとそのことは忘れて”しまっていた。よって初対面の敵としか見えていなかったものだ。

アクロボゼットも、カモフラージュ・シールドのせいで、女性ミクロマンがあのとき自分を拾った長い髪のカワイ子ちゃんだとは露程も思わない。

儀式の中途で邪魔が入ったせいであろうか、青いジャンバーの少年は催眠術の効果が途切れたらしく、体を大きくフラフラと揺らしたかと思ったら、完全に意識を失いその場に倒れてしまったのであった。

 

アクロ兵とアクロメカロボ達が、綾音とジャガーに向かい、飛び掛かってくる。

マグネジャガーは両手の指先から鋭い爪を出し、襲い来るアクロ兵達に次から次へと飛び移っては、鋭利な爪で顔面や腕を引き裂き、喉笛に噛みついた。マグネアニマルの戦闘能力は高い。野獣の動きをトレースした戦闘プログラムが組み込まれているのだ。俊敏な動きで襲い、弱点を攻撃、獲物を確実に仕留めていく。

しかし、数が数なので、一度に全部は相手にできないことからも、何体かはジャガーの脇をすり抜け、後ろにいる綾音へとその魔の手を伸ばしたのだった。

倉庫に来る前の区域であったなら、もしかするとミクロマンに通信が繋がっていたかも知れない、なんでもっと早い段階で通信を入れなかったのだろうかと半べそになるが、後悔先に立たず。とにかく真後ろに向かって逃げ出す。傍にいくつか転がっている大きな黄色い浮きの周囲を8の字を描くようグルグルと走って回り、追っ手をまこうとするものの、アクロ兵はどこまでも彼女を追跡してくる。

あっちに行ったり、こっちに行ったり、しばし滑稽な追いかけっこが繰り広げられるが、前方に待ち伏せしたアクロ兵が一体でてきてしまったので、綾音はつんのめりそうになりつつ慌てて足にブレーキを掛けたのだった。

前方と後方のアクロ兵が間合いを狭め、同時に少女に飛び掛かった。綾音はすかさず身を縮める。実際の身長と、カモフラージュ・シールドによる映像の身長差はかなりあり、アクロ兵の目測では女性ミクロマンの上半身に当たる所は何もない空間でしかなく、二体のアクロ兵はお互いの顔面をぶつけながら、兵士同士で抱き合ってしまった。瞬間的に綾音は真横に身をスライドさせ、上から落ちてくる抱き合うアクロ兵から逃れる。

急いで立って走り出そうとした矢先、別方角から、シャレコウベを模したアクロメカロボがドスドスドスと重い足音を響かせながらこちらに走ってくるのが見えた。ミクロ少女は圧倒され、動きを止めてしまう。真後ろでは先ほど躱した二体のアクロ兵がフラフラと立ち上がり出している。挟み撃ちだ。

「ヤヴァイッ・・・⁈」万事休す。綾音が身を固めたその時、青く巨大な長方形の物体がいきなり現れ、「ドッスン!」と、アクロメカロボを上から圧し潰した。コンクリ製の床との間に挟まれたシャレコウベはひしゃげてしまう。

ドッスン!」と間髪入れず、続いて後方からまた音がした。振り返ると、もうひとつ、やはり青く巨大な長方形の物体が二体のアクロ兵を上から完全に圧し潰し、破壊していたのだ。

 

 

何が起きたか分からないまま、フラリと二、三歩横にずれ、巨大な青い物体を見上げると、それは上にある白い部分と繋がっていることを知る。ふたつの白い部分はそのまた上の方で一つに繋がっていた。更なる上には丸みを帯びた大きく赤い物体が乗っかっており、赤い部分の中央には透明な長方形カプセルのようなものが取り付けられていて――。

「ロボットマン!!」いつも見下ろす位置から見ていたせいで最初はわからなかったのだが、形を確かめているうちに、いま見上げているものが見慣れた存在であることに綾音はハッと気が付いたのだった。

ロボットマンは磐城家を飛び出したあと猛スピードで漁業網倉庫にたどり着き、やはりドアの隙間から倉庫内に侵入。綾音のピンチを目にして、飛んで来た勢いのままキックの態勢を取り、速度の力も兼ね合わせたパワーでアクロイヤーの配下を踏み潰したのだ。

「誰も乗ってない⁈ それに、なんでここに・・・⁈」問いかけるが、意思を持たないロボットマンが答えることはない。代わりに、何と言うことであろうか、いきなり操縦席のキャノピーが開くと、ロボットマンはそこからまばゆい一条の光の束を綾音に伸ばし、再び己の胸に光を引き戻すと、少女のことを操縦席に招き入れたのである。

 

少数残ったアクロ兵は手にする実弾を発射するサブマシンガンにて、1体残ったアクロメカロボは口の中に装備されていたマシンガンにて、それぞれロボットマンに一斉射撃を浴びせかける。「キャッ!」パワー・ドーム(操縦席)の中で、驚いた綾音は両手で顔を覆った。透明なキャノピーの外で、バチバチバチ! と、銃弾が当たって弾ける火花が無数に咲き乱れる。しばらく銃撃は続いたが、そのうち一旦様子を見ようとしてか、アクロ兵達は引き金を引くのを止めたのだった。

弾が爆ぜて出来た煤がついただけ、特にダメージを受けていないロボットマンを見て彼らは愕然とする。キャノピーにせよ、装甲にせよ、何と言う頑丈さであろう。傷ひとつ付いていない。

恐る恐る目を開けた綾音自身も、同じ感想であった。以前マックスが教えてくれたのだが、ロボットマンの装甲は特別合金製、キャノピーも特別製で、ミクロマンアクロイヤーのもの、人間世界のもの問わず、銃弾レベルの物はまったく受け付けないそうだ。

そして、ロボットマンは乗り手が心の中で思い描く動きを取り、乗り手の何十何百倍もの強さと素早さで持ってその動きを再現すると言う・・・!

「よ・・・よぉし、やってみますか!!」と、少女は試しに足元の踏まれてひしゃげたアクロメカロボをロボットマンに持ち上げさせ、ドッチボールの要領で、マシンガンを撃ち込んできたアクロメカロボ目掛けて投擲させてみたのだった。ボールにされたシャレコウベは弾丸並みの速度で飛んで行き、見事アクロメカロボに命中。二体は全身の部品をバラバラに弾けさせて破壊されてしまったのである。

何と言う腕力だろう! マックス達に教えてもらった通り、このロボットマンはミクロマンが科学の粋を集めて作り出した超高性能万能型のスーパーロボットなのだ。搭乗者の命を守り、搭乗者の気持ちに従い共に戦ってくれる、搭乗者の超分身なのである。

綾音は憧れのスーパーロボットに自分が搭乗し、己の力で操っていることを実感した。

「マジスゲェ! これならあたしもアクロイヤーと戦える!」綾音は恐怖に高鳴っていた心臓が、熱い勇気の燃え滾る心臓の高鳴りに変換されるのを感じた。

 

既に出会っているのに、お互いに気が付けない、ふたり・・・

アクロ兵は、状況が不利になってきたと判断したのだろう、後退った。

「何をしてるんダッチ! 怖気づくな、やってしまえ!!」山の上の大将であるアクロボゼットが飛び跳ねながら大声を張り上げる。残る3体のアクロ兵は頷くと、態勢を立て直した。

先に戦っていたアクロ兵すべてをいま倒し終わったマグネジャガーがロボットマンの足元に移動してきて身構える。

ジャガー、アクロ兵は任せた! あたしは、あの樽みたいなやつをやっつける!」綾音の言葉に従うジャガーが、即座にアクロ兵に飛び掛かったのだった。

「やっつけるだぁ? 舐めてもらっちゃあ、困るダッチ!!」ニヤリとしたアクロボゼットが人差し指でロボットマンを指差す。すると両胸の突起から、数発の銃弾が撃ち出され、ロボットマンを襲った。マトにされてばかりでは癪に障る、避けるんだ、と綾音が思った次の瞬間、ロボットマンは思考を瞬時に読み解き、真後ろに跳んで事なきを得た。銃弾を浴びた、先程までいた足元のコンクリが大きく割れ、中心部は粉々に砕け散っている。どうやらアクロ兵の武器とは比べ物にならないほどのパワーを持つ射撃武器の様だ。

射角内にいるままのロボットマンに向けて、アクロボゼットが二度目の射撃を行ってきたので、「ヤバッ!!」と、綾音はロボットマンを今度は素早く側転させ緊急回避を試みさせる。「チッ!! 良く動き回るダッチ!!」怒る群青色ロボ。今回も事なきを得る綾音。

いくら頑丈なロボットマンとは言え、強力そうな相手の武器だ、当たらないに越したことはないだろう。しかし、どう戦う? 相手は漁網の山の上にいて距離はそれなりにあるし、こう撃たれてばかりでは危なっかしくて近づけない。

マックスが言っていた必殺武器、両胸から撃ち出す光子波光線の存在が一瞬頭をよぎる。

が、建物内のここで撃ったとしてどれぐらいの被害が出るのか、経験がない彼女は分からず、使用することを躊躇った。傍の床には倒れている少年もいるのだ。

「当てるから、黙って動かず立ってるダッチ‼」無茶苦茶な要求を出しながら、追い打ちをかけるように三度、アクロボゼットの胸の突起が火を噴く。慌てて超分身に、前転による緊急回避を試みさせる少女ミクロマンである。

 

――綾音は普通の人間の女の子だったので、自力で空を飛んだ経験はない。だから、ロボットマンを空中に飛ばしながら回避させたり戦わせることを、本能的に思いつけていなかったのだった――。

 

埒が明かないし、このままではまずい。そのうち疲れ果てて回避に失敗、大打撃を被りそうだ。どうにかして近づいて攻撃を加える手立てはないかと、綾音はヒントを求めて周囲を確認した。

天井の鉄筋の梁からぶら下がる幾本かのロープが目に留まる。倉庫内には天井を支えている何本もの鉄柱も床に建てられている。

綾音は三崎公園のアスレチックにて、ロープにぶら下がり遊んだ時のことをふと思い出したのだった。「そうだ・・・!!」少女は直感が働き、瞬間的に相手に対する攻撃方法を思い付く。

目測で計算、ちょうど良い場所のロープを見据えた。「やるよッ!」一か八かだ、と、迷うことなく綾音は実行に移った。

ロボットマンを前方に高く跳躍させると、梁にぶら下げられたロープを鷲掴みにさせる。ロボットマンはロープを握りしめ、飛び移った勢いのまま壁の方へと向かった。

アクロボゼットは想定外のミクロマンロボの行動に面食らった。そのうち光線武器を発射するか、もしくはジェット噴射でこちらに飛んできて体当たりでも仕掛けてくるだろうと予測していたのに、彼とは関係ない方、右手にある壁に向かったのだ。しかもロープを手にして。「何をする気なのだ」と、アクロボゼットは必死に分析を試みる。それすなわち、動かずに成り行きを眺めてしまったことを意味していた。

ロボットマンはロープを掴んだまま壁に到達する。綾音の計算通り、ロープはピンと張った状態になる。「行くよッ!!」掛け声をかけながら、少女は壁を思いっきり、大きな青い足で蹴らせたのだった。ジャンプの要領だ。アクロボゼットと真逆の方向に向けて跳ぶ超分身ロボ。梁に結ばれている部分を中心として、掴んだロープがそのまま時計回りに円を描き出す。

すぐに一本目の鉄柱の傍に達する。綾音は再びロボットマンに足裏を柱に着地させ、すぐさま蹴らせたのだった。弧を描いて宙を舞う勢いが増す。

二本目の柱でも同じ行動を取らせ更に勢いを増させると、ロープが引きちぎれんばかりの物凄い加速度がつき、あっという間に超高性能ロボットの巨体は、樽型ロボの元にたどり着いたのであった。

怪力を誇るロボットマンの脚力の勢いで、ホップ、ステップ、ジャンプを行ったのだ。とんでもない勢いが付いたことは言うまでもない。

そして最後。アクロボゼットが目の前に来た瞬間、綾音は分身の腰と右脚をひねり、アクロイヤーの手先に右足を思い切り蹴り出したのだった! サッカーボールを蹴る要領だ。

立ち止まり、必死になって状況を分析しようと試みていたゼットの胴体に、凄まじい勢いのある超加速度のついたハイパーシュートキックが決まる。群青色の樽ロボは今までに味わったことのないような衝撃を受け吹き飛ばされたのであった。

目視できないような早さで彼は宙を吹っ飛び、窓ガラスを突き破り、どこか遠くへと姿を消してしまう。

これすべて、瞬間的な――時間にしてほんの数秒の出来事であった。

 

「みんな、また次回、会おうダッチ~!!」

ロボットマンをロープから降ろし、床に着地させる綾音。見ると、マグネジャガーは残るすべてのアクロ兵をバラバラにして破壊し終わったところだ。動く敵はもういない。

決着がついたことを悟り、彼女は深い安堵のため息をついたのだった。怖かったのは確かだが、不思議と震えは出なかった。初めて事件現場の解決に挑み、頼もしい護衛が自分を守って活躍するところを見れ、憧れていたロボットマンに搭乗しみずから戦いのさなかに飛び込んで勝利したのだ。まだ生まれて10年しか経っていないが、生まれて初めて感じた何とも言えない高揚感、達成感、満足感、そして頼もしいロボットマンの中にいる安心感に、心も体もすべてが満たされていたのだった。

「ロボットマン、来てくれてありがとう!」綾音はキャノピーの真上に位置する銀色の頭部に話し掛ける。タイミングよくやってきてくれたのが必然なのか偶然なのかは分からないが、きっとマックス達が気遣い、こちらに自動操縦とか何とかで寄越してくれたのだろうと思う。

「ついに、あたしにロボットマンをくれる気になったんだな⁈ 勿論、もらっちゃおうっと!!」少女は都合よく解釈、満面の笑みで手を叩いて見せたのであった。

 

「う、うーん・・・」青いジャンバーの少年から声がする。気が付いたようだ。綾音はジャガーに手招きし、ロボットマンと共に漁網の山陰に身を隠した。

「あれ・・・ここどこだぁ?」意識を取り戻した少年が立ちあがり、倉庫内をキョロキョロと見回している。綾音は護衛に向けて人差し指を口に当てて見せた。マグネジャガーが自分の黒い手で口を押さえて見せる。

「俺、なんでこんなとこに・・・???」困惑した表情の少年は半開きの扉へと向かって行く。しっかりした足取りからして、怪我はないようだし、自分の意識をハッキリと取り戻したようだ。

首を傾げながら少年が建物の外に出ていくのを、ひとりと一匹は、黙ったままそっと見送ったのだった。

 

 

――元の大きさに戻り、綾音はロボットマンを抱え漁業網倉庫を抜け出すと、急いで胡桃の家に戻った。あれから30分以上は経っている。すぐ戻ると言っておいて時間がかかりすぎたと少女は青ざめた。

門のそばまで来ると、玄関に親友が立って待っているのが見えた。なかなか戻らぬ綾音を心配し出てきたのだろう。「遅くなって、ごめんねッ!!」左の手の平を縦にして顔の前にかざし、頭を軽く下げる。

「ううん、別にいいよ。お帰り」胡桃はいつもと変わらない、ホワンとした優しい表情で綾音を迎えてくれた。小脇に抱えているロボットマンに、彼女がチラリと目をやった気がする。綾音はとぼけて、ロボットを背中の方に隠したのであった。

「すごいね」と胡桃が小さな声で口にした。「え、何が?」問い返すと、「あ・・・ううん、なんでもない」と友達は首を横に振る。ロボットマンを見ての感想だろうか? どういう意味なのか聞こうとすると、胡桃が言葉を遮ってくる。「そろそろ帰らなくていいの? もう6時になるよ?」

「なんですとッ・・・⁈」綾音は飛び上がった。仕事が終わった母親が保育所の辰巳を連れ、そろそろ共に帰ってくる時刻だ。自宅に姿がない上にランドセルが置かれてないのを見たら、禁止されてる寄り道をしたことがバレるし、どこに行ったのだろうかと心配しだすはずである。

「やっべぇ! あたしのランドセル、ランドセル!」綾音は胡桃をまくしたてると、玄関に彼女が用意しておいてくれた荷物を急いで背負い、自宅へ向け走り出したのであった。

どう考えても、間に合わない! アクロイヤーとの初めての戦いで勝利を収めたばかりだと言うのに、綾音は怒るだろう母親への言い訳を考える羽目になってしまったのであった――。

 

 

◆お姉ちゃんへの日記 2021年4月〇〇日◆

『ロボットマンの行方が追えなくなった後、どうすればイイのか分からず、こちらではあちこち探しまわるだけ、右往左往していた次第です。しかも、知らないうちに事件が起きて、知らないうちに綾音ちゃんが解決していたと云ふ。ロボットマン持って帰ってきた時には、みんなして唖然としてしまったよ・・・(-_-;) 事件のこと聞かせられたら、マイケルさんなんか腰を抜かしていたッ・・・( ´艸`)

アクロイヤーに関する情報が入った際の段取りについて私達が綾音ちゃんにきちんと伝えていなかったこと、通信機が妨害されてこちらに連絡できなかったこと、ロボットマンが勝手に自分で綾音ちゃんのところに飛んで行き乗せてしまったこと、これらの不可抗力的な事情も顧みて、今回の彼女の危険な行動は不問に付されることとなりました。

勿論、マックスさんがひと言、「今後は勝手に一人で先走った行動に出てはいけないぞ」と言うお小言はしていたけどね。何にしても、無事で良かった良かった!!( ^^*)

でも、ロボットマンは、何で一人で飛んで行けたのかなぁ(・・? ウェンディも言っていたけど、多分、ロボットマンは綾音ちゃんがピンチになるかもしれないことを感じ取って、力を貸しに行こうって急いで駆け付けたんだと思うの。ロボットマンは綾音ちゃんのことが好きで放っておけないんだよ~キャッ(⋈◍>◡<◍)。♡』

 

アリスはミニチュア学校机の上に広げた、PCモード・モバイルブラスターのキーボードから手を離す。アルティメット整備工場では、異常な動きを見せた原因を求め、アイザック達が目下のところロボットマンを詳しく調査中である。日記に書いたように、どこか夢見る少女のままのアリスは、ロボットマンが愛とか友情の力で動いたと固く信じていたのだった。

 

〔つづく〕

第7話・ロボットマンはもらったよ!<前編>

 

いわきと言う土地は、不思議と桜咲く春に入る頃――卒業入学シーズン――に、その冬、最後の雪が降ることが多い。2021年3月23日(木)。この日はいわきの各小学校の修了式・卒業式だったのだが、やはり雪が降ったのであった。いわきは元来、大雪が降る様な土地柄ではなかったし、そもそも今回の雪は真夜中から降り出し、朝を迎えるころにはやんだ為に、降雪量は大したことがなかったものである。

修了式を終えた下の学年が早々に下校すると、引き続き6学年の卒業式が執り行われる。午前中にはすべてが済まされ、子供たちは全員帰路についた。家族が車で来た者たちは、ここで車上の人となるわけだ。

ちょっとした高さがある丘の上にあるこの小学校の保護者用駐車場は昔ながらの土が露出しているものであった。卒業式と言うこともあり、次々に出入りする車両の数のあまりの多さから、タイヤで表面の雪と土はぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、泥状にされてしまっている。雪として踏みしめられる深さまで積もりもしていなかったし、雪雲から晴れ間も見え始めており、段々と雪が溶けてきていたせいもあった。

 

車の出入りがなくなり、校門から徒歩で帰路につく子供たちの姿もなくなった頃――。

保護者用駐車場の奥、まばらな木々の周辺に生えている草むらの一か所が、風もないのにざわざわと揺れた。手のひらに乗るほどの小さな三つの影が草むらから飛び出し、ドロドロの地面を避けるよう、順番にあちこちに散らばる埋もれていない小石に飛び移っていく。駐車場の土手の下側にある舗装された道路との境目に点々と設置されたロープが結ばれた杭があるのだが、次にそこへと跳ぶと、順次ロープの上を綱渡りしながら出口に向けて見事に駆けて行ったのだった。

駐車場の端にある出入口付近までたどり着くと、三つの影はもう一度地面に降り、“保護者用駐車場”と大きく書かれた白い縦長看板の陰に身を潜める。リスあたりの小動物が遊んでいるのだろうか? いや、違う。その正体は小動物とは全く異なるものであった。それは三つ共に身長10センチ前後ぐらいの、メカニカルな雰囲気を醸し出しているロボット状の物体であったのだ。

一体は、人型をしている。全身群青色をしており、顔つきは黄色い太い眉に大きな目と出っ歯。胴体は樽のような形状で、腹にはアルファベットの白いZの文字が書かれた赤丸腹掛けの様な物が付いている。Z文字の両脇には赤い突起状の物――銃器や火炎放射器の砲身を連想させる――が外に飛び出していた。手足はとても短い。

もう一体は、軽装鎧を身にまとったサル――おそらく西遊記に出て来る孫悟空――をディフォルメした様な形状をしており、全身が黄土色。顔の下半分と襟首の赤い塗装がおそらく大きな口を表現しているのであろう、そこが鮮やかな別色をしていることもあり、口ばかりが目立って見えている。右手には長い棒状の物を携えており、孫悟空を模しているのだとすれば、おそらくそれは愛用の武器・如意棒なのではないかと思われた。

最後の一体は、人の姿ではなく、ハサミ状の大きな両手を持つ、真っ黒いカニの姿をしている。外に飛び出した大きく白い両目がギョロギョロとしており、平べったい胴体で、背中には小さな大砲のようなものを背負っていた。

三体すべて、どう見ても全体的にコミカルな姿形をしている極小ロボットである。

「ようやく、子供たちがいなくなったダッチ!」群青色の樽ロボが、ちょっとガラ声の少年ぽい声で他の二体に話しかける。

「今のところ、本当に誰にも見つかっていないザンスダッチよね?」黒いカニロボは高めの男性っぽい声をしていた。やたらとあちこちに目をやり、少し震えていることからも、怯えているのではないだろうか。

「心配ご無用。それがし達の隠密行動に、問題はないでゴザルダッチ」孫悟空ロボが、堂々とした武芸者の様な言い回しで答える。

「ここが、ミクロマン達の邪魔が入って今のところ手付かずになっている、子供らの学び舎ダッチ・・・」樽ロボがそっと物陰から校舎を見上げた。

 

アクロイヤー・ユニーカーダッチ軍団

この三体はアクロイヤーの手下ロボである。話も出来なく、言われた通りの行動しかとれない雑兵のアクロ兵や量産型アクロモンスターとは異なり、AI搭載の自律型で、配下の中でも格が上の存在だ。群青色の樽風ロボはロボゼット(通称アクロボゼット、もしくはゼットと呼ばれている)、孫悟空風ロボはロボット59号(通称ゴクーと呼ばれている)、カニ風ロボはカニサンダーという名前であった。アクロボゼットをリーダー格としたこの三人は、まとめてアクロイヤー・ユニーカーダッチ軍団と呼称されている。

彼らは、この間までいわきにはいなかった。いわき市において、アクロイヤーが行っている極秘計画の妨害にミクロマンが本格的に乗り出したと推測されたことから、増援部隊としてアクロイヤーに召喚されたのである。自分達が誰に作られたのか、どこから連れてこられたのか、彼ら自身、知らない。気が付くと、彼らは10日ほど前にいわきに現れており、記憶も意識もそこからすべて始まっていたのだ。生まれたばかり(?)なのだろうか? 昔の記憶は何もなかった。が、不思議とそれぞれ名前は自分達でも分かっていたものである。

召喚され、一番最初に目にしたのは、アクロイヤーいわき侵略軍幹部である3体のアクロイヤーであった。アクロイヤーが主人で、お前達は子分という立場である。命令を受けつつ、今行っている極秘計画(いわきに居るミクロマン達が“神隠しがやってくる”と呼称しているもの)を遂行する為の手伝いをしなければならない。本来、幹部のひとりデモンブラックが計画を立てて命令や指令を下し、アクロ兵やアクロモンスターに現場を任せていたのだが、頻々とミクロマンが姿を見せるようになってからと言うものは、指令通りにしか動けない彼らでは事足りないことが多くなってきた。自ら考え動くことが出来るお前達に、現場での陣頭指揮を取る権限を与えるものだ。我々の手足となって働け。また、邪魔してくるミクロマンは敵である。邪魔するなら倒してしまえ。――三人は、こんな事柄を次々に教え込まれたのである。

それ以上は何も教えてもらえず、想像することもできなかった。自分たちが何者で、何をする為に存在しているのか分からなかったので、とにかくやるべきことを伝えてきてくれる目の前にいる者達が言うことを聞くことにしたのである。彼らより格下と言うのは納得できない気がしたが、明らかにあちらの方がパワーが上と感じたので、今のところは余計な考えを起こさないのが得策であろうと判断。三人はアクロイヤーの子分として働きだしたのだ。

 

彼らは市内に存在するいくつもの小学校の下見を開始した。そしてチームミーティングの末、今日訪れたこの小学校を、取り合えずの最初の目標としたのである。

子供たちの情報を入手したり、罠を張り巡らせるため、近辺の下調べも念入りにしなければならない。さて、これから何としたものか。校舎の周囲にある体育館や倉庫から下調べするか、いきなり中に不法侵入してしまうか、周囲の街並みを見てみるか、議論し合う。話に夢中になると、徐々に彼らは周囲のことが目に入らなくなっていったのだった。

「・・・⁈」真っ黒いカニサンダーがあることに気が付き、起ころうとしていることを仲間に伝えようとした時には、すでに時遅しだった。坂の下から保護者用駐車場に向けて真っ赤なダイハツ・タントがやってきて、看板の脇を通り過ぎようとしたのだ。出入口付近はもう水状の泥で、タイヤが思い切りはねたドロドロが彼らを襲ったのである。ゴクーは間一髪、後ろに跳んでかからずに済み、カニサンダーはアクロボゼットの後ろに位置していたので事なきを得た。

「うわぁ、ぺっぺっ、目に泥が~ッ!!」群青色のリーダーロボだけがまともに全身に泥を浴びてしまい、苦しみのしかめっ面になる。

 

看板からすぐ傍の駐車スペースにタントが停まり、助手席から長い髪をしたジーパン姿の女の子が出て来る。小学校中学年くらいの子だ。ロングヘア少女は土手の下、舗装された道路の向こう側にある校門へと向かい足早に歩き出す。

見つかってはまずいと、慌ててゴクーとカニサンダーはそばの背の低い草むらに身を潜めた。しかし、アクロボゼットは目が見えず訳が分からなくなり、物陰から飛び出してしまう。挙句、泥で足を滑らせ土手を転げて行ってしまったのであった。

女の子が土手下の道路脇についたのと、アクロボゼットが彼女の真っ赤な雨靴のところまで転げていきぶつかったのが同時であった。

「・・・何これ?」少女は足元に転がってきた泥だらけの群青色ロボを拾い上げる。拾い上げたその少女は――綾音であった。修了式が終わり、学校が早く終わって嬉々として帰宅したのは良かったのだが、くつろぎかなり時間が経ってから急に上履きを下駄箱に忘れてきてしまったことに気が付いたのである。偶然、仕事が休みで母親が家にいたこともあり、車に乗せてもらい舞い戻ったところであったのだった。

「ロボットのオモチャ・・・誰かが落としていったのかな?」綾音はアクロボゼットを手にしたまま昇降口へと向かう。仲間が連れ去られてしまう! ゴクーとカニサンダーは慌てつつも、誰にも見つからぬよう最善の注意を払い、前後・左右・上と下をご丁寧に確認してからコソコソと後を追ったのだった。

泥が目に入り細かい状況は見えていないものの、子供に見つかりオモチャと勘違いされ手にされていることを、アクロボゼットはしっかり認識している。こうなるとどうにもできない、ひとまず動かずにいることにする。人間に姿を見られるな、見られたとしてもオモチャのふりをして事なきを得るのだ、今後の計画に支障をきたすので存在を人間に知られるのはまずい、と言うアクロイヤーの命令である。

綾音は昇降口の中には行かず、外にあるいくつか並んだ蛇口へと歩みを進めた。可哀想だったので、泥だらけのロボットくんをキレイに洗ってあげることにしたのだ。

アクロボゼットは冷たい水道水で全身を洗われ、くすぐったさに絶叫を上げたいのをこらえながら、必死に我慢して動かぬようにした。

完全に汚れが落ちた後、ハンドタオルでキレイに水分を拭う綾音。「いやぁ、キレイになったね、ロボくん」顔の泥はなくなっていたし、少女が自分の目線にアクロボゼットを持ち上げて眺めたので、彼も初めてそこで少女の顔を拝むことが出来た。大きな目がきょろきょろとしている、長い髪をしたなかなかのカワイ子ちゃんである。好みのタイプだった。

「キミはどこの家の子なの? 忘れ物みたいって先生に渡してあげるからね。持ち主が早く見つかるといいね!」落とし物扱いでどこぞに置いてもらえれば、あとはいかようにも逃げ出せるとアクロボゼットはホッとする。が、胸を撫で下ろしたのもつかの間。いきなり何の前触れもなく、その見知らぬ少女がアクロボゼットの顔を自分の顔に近づけたので、彼は何ごとかと焦った。

さよならの挨拶代わり、深い意味もなく綾音は群青色の樽ロボに軽くチュッとキスをした。

アクロボゼットから見たら、まったくもって予想も想像もしていなかった少女の行為である。キスの意味など知らぬアクロボゼットでもあった。その行為が何なのか意味が分からず、必死に分析しようとしたが、さっぱり答えが出ない。考えすぎて脳天にある電子頭脳がショートしそうになる。電子頭脳をフル稼働させる為、必死にパワーを与えようとした心臓エンジンの回転数も上がり過ぎてしまい、オーバーヒートを起こしそうになる。

な、な、な、なんなのだ、この今までに感じたこともないような、エンジンの熱さと、脳天が爆発しそうになる感覚は・・・⁈ ・・・こ、これは・・・プツン。混乱がついに許容範囲を飛び越えた瞬間、彼はオーバーヒートを起こし、電源が落ちて意識を失った。

アクロボゼットが目を覚ましたのは、職員室にある落とし物箱から、人間に見つからぬようこっそりと仲間達に救出された後のことだった。もうその時には彼にキスした見知らぬカワイ子ちゃんの姿はなかったものである。

綾音がミクロマン達に護衛マグネアニマルを与えられる一週間前の出来事であった。

 

 

――短い春休みが終わり、綾音は小学4年生に進級した。教室は同じ階の奥に向かっていくつかズレただけ。担任やクラスメイトの面々も同じままだったので、いまいち学年が上がった実感がない。渡された真新しい新教科書をパラパラとめくると、勉強が小難しくめんどくさくなっただけの様な気がした。そんな感想しか持たなかったものだ。

新学期が始まって何日か後のこと。「綾音ちゃん、新しい絵本を3冊も買ってもらったんだよ。可愛いやつだよ。見においでよ」誘われたこともあり、綾音は下校の流れのまま、自宅には戻らずクラスメイトの中で一番の親友である高野胡桃(たかのくるみ)の家に遊びに寄らせてもらったのだった。帰宅する際の寄り道は学校から禁止されていたのだが、胡桃の家は綾音の自宅とは正反対の方角だったので、いちいち家に戻ってから遊びに行くのは面倒であり、周囲をごまかし内緒で回らせてもらったのだ。

胡桃の自宅は、茶色いレンガ調タイルの壁をした、西洋風の作りをしている。今までも何度かお邪魔したことがあったが、二階の胡桃の部屋も、一階のリビングも、可愛らしい手芸作品や絵本、ぬいぐるみ、絵画、花瓶などが数多く置かれており、綾音はなんて外国みたいなロマンチックでステキなお家なんだろうと来るたびに感激していたものである。

胡桃はちょっぴりポッチャリさん、髪型はショートにしたボブで、いつもスカート姿。生粋の日本人のはずなのだが目鼻立ちがしっかりしていて色白、どこか白人の様な雰囲気を持ち合わせていた。性格は大人しくおっとりしており、ポワンと風船のように浮かんでいるような、誰かがついててあげないと風に飛ばされてしまいそうで危ういものをしている。

本人に伝えたことはないが、ロマン溢れる胡桃の家にお邪魔させてもらうと、まさしくこの家にピッタリの子供だと綾音は思わずにはいられなかった。

胡桃の母親は保育士で、同じ町の保育所に勤めており、弟の辰巳の担任でもあった。3年生の時に同じクラスになり、話しているうちに気が合ったこともあるのだが、辰巳を通しての関わりも発覚してからは、更にお互いの心の距離感が縮まったのである。決定的だったのは、彼女の誕生日が、綾音と同じ日だったことである。いつの間にやらふたりは大親友になっていた。

 

誰もいない胡桃の家でジュースやお菓子をご馳走になったり、絵本を見せてもらったり、世間話をしていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。そうこうしているうちに、いつしか日も傾きだした頃。「なんか鳴ってるよ?」胡桃が綾音のランドセルに目をやりながら伝えてきた。綾音は中からピンクのスマホを取り出す。母親かなと画面を見ると、LINE友の陽斗からメッセージが届いていたのであった。

LINEアイコンをタップし、画面を開く。プロフィール画像は美味しそうなラーメンにしている陽斗。そんな彼とのトークを確認すると、『綾音さん、頼まれていた件、また情報がひとつ入りました』と書かれてあった。

綾音はミクロマンの仲間に入れてもらった以降、LINE友を通し、いわき市内の子供達で交わされている“神隠しがやってくる”の噂話、またそれに関わると思われる類の情報を集め出していた。隣の学校との交流学習で知り合った陽斗は偶然にもLINEマニアで、市内各地にLINE友をたくさん持っている。彼に相談すると、二つ返事で協力してくれることになり、以降、こうして情報を伝えてきてくれているのだ。

彼のつながりは大したもので――各情報の真偽はひとまず置いたとしても――色々と話を仕入れてくれるので、綾音は頼りにしていた。勿論、なんで調べているのか本当のことは言えないので、「クラスの友達に読んでもらっている、個人的趣味で書いてる学級新聞に掲載する為に情報を集めているんだ」という名目で、お願いしていたものである。

 

 綾音『今度はどんなん?』

 陽斗『綾音さんの学校の近所に、朝月マンションって言う大きな白い建物あるでしょ?』

 綾音『うん』

 陽斗『その近辺で“神隠しがやってくる”が起きてるんではないか、と言う噂が出てきてるらしいんです。結構、新しめの話みたい』

 綾音『そうなんだ!』

 陽斗『あと、これは全然、別口の情報なんだけど。マンションすぐ裏手の路地の奥に、使われてるんだかいないんだか分からない、灰色の壁をした漁業網倉庫があって、そこがめちゃ怪しげな場所らしい。・・・何か関係あるんスかね?』

 

いつの間にやら興味本位で勝手に画面を覗き込んできていた胡桃が、何のやりとりなんだろう? ときょとんとする。「朝月マンション、漁業網の倉庫・・・すぐそこだね」胡桃が立ち上がり、部屋の窓から外を指さした。綾音も立ち上がり、指さす方角を確認する。二階にある胡桃の部屋から見える町並みの中、ほんの少しだけ離れた場所に白いマンションが見えた。

「そうだ、胡桃ちゃん家の、すぐそばじゃん・・・」朝月マンションも、怪しげな倉庫と言うのも、歩いて5分もかからない距離である。

ちょっと見てきますかね? ミクロマン達の為にも? と、綾音は何も深く考えず、短絡的に発想、決断した。実は今までにも数回か、このような感じで情報が来たことを通してミクロマンが調査に向かったことがあるのだが、いずれも空振りだったのだ。彼らに行ってもらう前に、どのような感じかちょっとでも見てきておけば、実際に彼らが行動に出るべきかどうかの判断材料にもなるだろう。

「胡桃ちゃん、ごめん、ちょっとランドセル置いてて。あたし、そこ見てきてみる。見て来るだけだから、すぐ戻るからね。待っててね!」「え???」綾音は相手の返事も待たずに玄関に向かったのだった。

 

 

外に出ると、小さな声でお供の護衛を呼ぶ。「黒猫ちゃん、どこにいるの?」間を置かずして胡桃の家の花壇から真っ黒い子猫が飛び出し、綾音を見上げてきた。可愛らしい子猫の姿が一瞬だけブロックノイズを起こしてブレ、本来の姿である黒いメカニカルな姿をしたジャガーが見える。「黒猫ちゃん」と呼ぶのが、子猫にカモフラージュ・シールドで偽装しているマグネジャガーにやってこいと知らせる、綾音が考え出した合言葉であった。

空を仰ぎ、もう一体の護衛である鳩に偽装したハリケンバードの姿を探すが、どこにも見当たらない。おそらくミクロマンの指令で他所をパトロールでもしているのであろう。ジャガーがいるだけでも良しとしよう、綾音は空飛ぶ護衛による支援の方は諦めた。

ジャガー、ついて来て!」やはり綾音はマグネジャガーの意思も確認せずに胡桃宅の門を飛び出すと、朝月マンション目指して駆け出したのである。

 

 

胡桃の家がある区画は、真新しい今風の家が立ち並ぶ近代的な場所だ。これは近年、田畑が広がっていた広大な土地が埋め立てられ、分譲地として売りに出されたことに起因する。綾音はジャガーと共にその近代的な家並みを通り過ぎると、通りに出たのだった。

車が来ないことを確認して信号のない横断歩道を渡り、朝月マンションがある区画に入る。すると雰囲気が一変した。今までいた場所と異なり、こちらは古い昭和作りのトタン製民家や、前時代的な作りをした市営住宅で占められた、昔からある住宅地なのだ。家と家の隙間も狭く、道も昔のままでかなり入り組んでおり、至る所が薄暗い。令和を生きる現代っ子の綾音にとって、昭和の雰囲気のまま時が止まってしまったようなここは、とても不思議な感覚に襲われる場所であった。

目的もなく周辺をウロウロ確認して回るより、ひとまず話題に出た倉庫に向かうのが良いだろうと綾音は考える。倉庫に行くのは初めてだが、マンションのすぐ裏手なら迷うはずもない。少女は朝月マンションの裏側にある路地に向かい、どんどん歩みを進めた。

マンションの裏手に当たる問題の倉庫に続く狭い通りは舗装されておらず、マンション側は高い生垣、反対側は古めかしい焦げ茶色をした木製フェンスで覆われている。どちら共に大人以上の背丈があって道路は日当たりが悪く、湿気っぽいジメッとした匂いがどことなく漂っていた。表面が汚れてすすけ、下部が少し苔むした電柱やら、緑色の半ば破れたメッシュフェンスに覆われた大きめのごみ集積所があるくらいで、目立つようなものはない。完全に一本道で、奥まったところが左に折れている。恐らくこの先に漁業網倉庫があるのであろう。表の通りにしても、踏み込もうとしている裏道の方も静まり返っていた。ほとんど人影はなく、裏道にも人がひとりいたくらいで・・・。

「・・・⁈」綾音は裏路地の奥、曲がり角より少し手前にいたその見かけた人物の様子がおかしいことを察知、機転を利かせ、ゴミ集積所の陰に隠れたのだった。木の板などで補強されているゴミ集積所からそっと覗き込む。同い年くらいの青いジャンバーを来た少年が奥に向かって歩いている。どう見ても、普通の歩き方ではない。身体を左右にユラユラとさせ、のそりのそりとゆっくりとした歩調で進んでいるのだ。右肩にはグレー色のまあるい物が乗っかっている。短い手足が付いているそれは以前、山の神社で目撃したアクロメカロボであった。頭蓋骨の形をした強烈なインパクトを持つそれを、後ろ姿だからと言って見間違えるはずがない。それ程しないうちにジャンパー姿の少年は左に折れ、姿が見えなくなった。

「やべぇ、ドンピシャだわ!」何という偶然だろうか。“神隠しがやってくる”犯行現場に出くわしてしまったようだ。足元のマグネジャガーに視線を落とすと、ジャガーは綾音の顔を物言わずに見てきた。「どうするよ、あんた?」少女の問いに、喋れないジャガーは何を言いたいのか、首を傾げて見せる。綾音は一瞬だけ悩み、アクロイヤーが子供を連れ去る先の場所だけでも特定し、それからミクロマンに通信を入れることにしよう、と決心した。

「目立たないよう、こういう時こそ、これだよね⁈」綾音は己に問いかけるよう独り言を口にし、左手首のデジタル腕時計“ミクロ・ウオッチ”を己の前に掲げた。もらってからと言うもの毎日身に着けていたが、ミクロマン達の元以外では、まだ自由に一度も機能を使っていなかったのだ。

周囲には誰もいない。高い生垣と壁もあることから、どこかの家の窓から人に見られてもいない。「ミクロ・チェンージッ!」綾音の口にする命令コマンドを受け、腕時計の古代エジプトの鷲マークが輝く。次の瞬間、綾音は身に着けていた様々なものを含めてみるみるうちに縮小し、ミクロ化。カモフラージュ・シールド機能が同時作用したこともあり、スカイブルーとレッドのツートンカラーをした女性型ミクロスーツを身にまとう姿格好になった。背丈も大人ほどあり、顔はまったくの別人、女性ミクロマン風フェイスである。

「何度なってみても、こりゃ凄いわ。よし行こう!」ミクロマン綾音は颯爽と黒豹の背に跨る。ジャガーは困惑気味に背中の主人を見て再び首を傾げた。「今の子が連れていかれた場所を確認しに行こうよ。大丈夫、あたしを守る為の護衛のあんたもいるわけだしね。レッツらゴー!」両脚でわき腹を蹴られ、困ったような目をしながら、マグネジャガーは漁業網倉庫へ向け、足音を一切立てずに走り出したのだった。

事件現場に遭遇して非常に驚いたこと。本当は怖いのにも関わらず、少年が連れ去られる先の場所特定を試みようと決心したこと。初めて自分一人でミクロ化した高揚感。それらがぐちゃ混ぜになった興奮で、綾音の心臓は激しく高鳴り始めていた。

 

いまだ修理中のミクロ・ワイルドザウルス

――同時刻。磐城家、綾音の部屋。その時、アリスは指令基地のシートについていた。先ほどマイケルから通信で聞かせられたパトロール報告内容を記録していたところである。数日前から通信機器やレーダーに乱れが生じ始めていた。アクロ妨害粒子の濃度が上がってきている疑いが濃厚で、粒子の濃度調査を含めての報告である。

アリス達がいわきに着任した当日に起きた戦闘以降、いわきにおけるアクロイヤーの動きは気味が悪いほどひとつも確認されずにいた。それがここに来て、また新しい作戦に打って出てきたのではと、ミクロマン達の警戒心も高まっていたものだ。

「あれぇ・・・?」アリスは小さく疑問符のついた声を上げる。目の前の大型メインスクリーン上には、先ほど受けた報告の記録をつけているウィンドウが開いていたのだが、それに覆いかぶさるよう別ウィンドウが勝手に開いたのだ。おかしく思ったアリスはキーボードを叩く指を止め、何が開いたのかと目を走らせる。新しく開いたウィンドウは、アルティメット整備工場にあるロボットマンから出された信号を知らせるものであった。

誰がやっているのか、ロボットマン・コクピットから、指令基地に対して遠隔操作指示が出されているようだ。指示通り、指令基地は綾音の部屋の窓に取り付けられた開閉装置を作動させ、窓を大きく開いたのだった。綾音の部屋の中から出動する際のことを考え、ミクロマン達が用意した仕掛けである。

「どうした?」指令基地の側にいたメイスンが何事かとアリスに声を掛けた。「私じゃないですよ」アリスは答えると、「なんですか?」と、ロボットマン・コクピットに通信を入れた。が、返答はない。「誰も乗ってないの・・・?」不審に思い、次にアリスは工場内にいる面々に向けて、スピーカーアナウンスを入れたのだった。

アルティメット整備工場内にある中央メインスペースにて、壊れた戦闘車両を取り囲み修理をしていた、マックス、アイザック、サーボマン・アシモフ、同ウェンディは、壁に設置されてるスピーカーを通したアリスの話に目を見合わせた。「アリス、誰も乗りこんでないし、こちらから操作なんてしてないぞ?」マックスが腕の通信ウオッチで応答する。

アシモフが、工場内ロボット整備区画の天井を指さした。「何だっぺか? ロボット発進口のシャッターが開くみたいだね?」天井シャッターがいつもと変わらぬ動きで徐々に開いていく。

 

 

「マックス、ロボットマンを見てください」もう一体のサーボマン・ウェンディが、彼の愛機の異常をマックスに伝えた。

「な・・・に?」誰も乗っていないのにコクピット内の計器類が点灯している。先程まで沈黙していたのに、いつの間にやら内部電源が入っているのだ。事態が呑み込めず、とにかく確認しに行こうとマックスが思った矢先のこと。巨大ロボは大きく起動音を発すると両目を輝かせたのだった。完全起動したのだ。すかさず両足の底からジェット噴射が始まる。「なッ・・・⁈」巨体が徐々に、工場の天井にある発進口から抜け出して行く。こうなると急に止める術はない。ロボットマンが綾音の部屋から大空へと向かって飛んで行くのを、場に居合わせたものは呆然と見送るだけであった。

 

 

「ロボットマンサイドから出された指令基地への遠隔操作により、部屋の窓の開閉装置ならびに工場ロボット発進口シャッターが開かれたのを確認した」アイザックがスーツ左腕前腕部に組み込まれているコンピュータを素早く操作、関連する各機器から情報データを収集している。「今の今まで確実に誰も搭乗していなかったことも裏が取れた。信じられない、誰も操作していないのに、ロボットマンが自分で各発進口を開いたのだ。そして自分で自分に自動操縦をセット、勝手に飛んで行ったのである!」自身に疑問を投げかけるような口調のアイザックに、マックスが声を張り上げる。

「ロボットマンに意思はない! 誤作動だ! 急いで強制停止プログラムを作動してみてくれ!」過去、この様なことは一度として起きたことはなかった。戸惑うマックスに、アイザックは首を横に振る。「一番最初に、それをやってみたのだ! だが、ロボットマンが命令を拒否、こちらからの操作を弾いたのである・・・!!」マックスは愕然とする。

「ロボットマンは自動操縦モードにて飛行中。フルスピードにて南東方角に向かって移動しているようだ! 目的地はやはり事前に手前でセットしたようなのだが、いま確認・・・いや、ちょい待ち! アクロ妨害粒子の濃度が上がってきているようで、電波障害が発生したぞ・・・通信が途切れてしまったのだ。ロボットマン内のデータ確認が出来なくなってしまった! 追跡装置の信号も拾えない。跡を追えなくなったのである・・・!!」天才の眼鏡のレンズに、腕のディスプレイに映し出されたミクロマン文字によるlose sightが、反転した形で映り込んでいたのだった。

 

〔第7話・ロボットマンはもらったよ!<後編>に、つづく〕

オープニングⅡ

神隠しがやってくる! アクロイヤーの仕業だ!

子供が行方不明になるその恐ろしい事件に、

ミクロマンは友人となった綾音と共に挑む!

そして綾音も戦う、ロボットマンと共に――!

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チェンジ・チェンジ・チェンジ

ミクロ・チェンジの衝撃と

チェンジ・チェンジ・チェンジ

ミクロ・チェンジのミステリィ

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きみのジーンズのポケットには

カメラ・ロボか ガン・ロボか

キミの左の その腕には

最新鋭の ウォッチ・ロボ

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チェンジ・チェンジ・チェンジ

ミクロ・チェンジの衝撃と

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チェンジ・チェンジ・チェンジ

ミクロ・チェンジのミステリィ

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キミに自由に 使ってほしい

キミの地球を救うために

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ミクロマンからの 愛・あい・AI

心からの 愛・あい・AI

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ミクロマンG線上のアリアー ひとり製作実行委員会2021・2022

協力:読者の皆さん(の愛・あい・AI)

 

第6話・承前、アリスの日常

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「ダン! ソロモン! カタパルトハッチを開きます!」アリスは、広い指令室内の壁一面を占める様々な情報が映し出された超巨大スクリーンを見る目をそのままに、手元のタッチパネル式キーボートを素早く操作した。それは基地内すべての機能を掌握、操作できるオール・コントロール・キーボードである。

彼女が今いる磐城家の屋根裏に建造された巨大・新Iwaki支部の中央指令室内は、張り詰めた空気に支配されていた。誰もが予想しない緊急事態が起きたのだ。

「磐城家にカモフラージュ・シールドを展開・・・外部への視覚情報を遮断成功。

磐城家のルーフ開閉します・・・ハッチオープン!

カタパルトデッキ、周辺空域全方向・・・オールグリーン!

問題ありません! 最初に移動基・・・」

「悪ぃ、お先に!」自慢のメタリックイエローの単車ハイパースピーダに跨るマスターミクロマン・ソロモンが、アリスのアナウンスを途中に、磐城家の屋根内部からせり出し展開されたカタパルトから猛スピードで飛び出した。

「ったく、マックスの野郎、俺達を差し置いて!」スパイマジシャン・ダンが誰に言うともなく声を荒げる。「スパイマジシャンチーム、移動基地も発進する!」バイクに続き、飛行機の形をした巨大な飛行要塞、青い色をした移動基地がカタパルトから勢いよく大空へと向かって発進した。

「お願い、みんな、マックを助けて・・・」アリスのそばにいる、ミクロ化した辰巳は心配のあまり不安が爆発、シートに座るアリスにしがみついた。「大丈夫、マックスさんは絶対に負けないわ!」そう口にするアリス自身も不安げな目で、後ろを振り返り、頼るように支部長タイタン・ヘラクレスを見た。だが、ヘラクレスは巨大スクリーンを睨め付け、無言のままだ。指令室内にいる面々を安心させたり、励ますような言葉ひとつもかけはしない。その態度こそが、彼の信条と、彼がいま思うところのすべてを物語っている。嫌と言うほど場にいる全員にそれが伝わったのだった。

「マックスは一人で片をつける気です・・・。ロボットマンの両肩には我々最強の武器、地海底ミサイル二基を装備させてありました・・・」表情がないはずのサーボマン・ウェンディの小さな両目が暗く沈んでいるように見える。

「あれは・・・⁈」アリスは愕然とした。指令室の超巨大スクリーンに、海面を押し分け、深く暗い海の底から徐々に空に向け浮上してくる、巨大な頭蓋骨を模したアクロイヤー戦闘移動要塞の全貌が映り始めたのだ。曲がりくねった二本の角が額に生えた、見る者すべてに恐怖を与えるような、おどろおどろしさを放つ悪魔の超要塞である。

いわき各地に飛ばしているミクロスパイドローンのカメラのひとつがキャッチしている映像なのだが、あの邪悪な要塞に、マックスは単身ロボットマンで向かったのだ。誰に断わることもなく。いわきの地を脅かし続けていたアクロイヤーと今まさに決着をつけるために。

「綾音・・・綾音はどうした⁈ 今どこにいるんだ⁈」ようやく口を開いた支部ヘラクレス。アリスは一瞬、言葉の意味が分からずに頭が真っ白になった。

「綾音・・・ちゃん? ああ・・・そうだ、あの子は、どうしているんだろう?」アリスも、少女がどうしているのか分からないでいる自分がいることを、その時、初めて自身で認識したのだった。

「聞いているんだ、アリス隊員! 綾音はどうしているんだ⁈ 所在は⁈」「え、え・・・えっと・・・!!」アリスは焦り出す。――綾音ちゃん。可愛くて、長い髪をしていて、いつも明るくて、正義感が強くて、ちょっと無鉄砲なじゃじゃ馬で、でも皆を思いやる気持ちが誰よりも強い、綾音ちゃん。新Iwaki基地のアイドル的存在で、みんな大好きな、綾音ちゃん。あの子、今どこにいるんだっけ? どうしたのだろう、全然思い出せないし、分からない。あんなにいつも傍にいたはずなのに。

「答えろ、アリス隊員!」

「あ・・・あの・・・」

「どうしたと言うんだ⁈」

 

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「どうしたんだ⁈ ・・・応答しろっつってんだよッ!!」ピンク色のミクロスーツを身にまとった、おかっぱ頭のアリスは、目の前の大型メインスクリーンから聞こえてくる、ガサツな大声に驚いて目を覚まし、体勢を崩して黒いシートからずり落ちてしまったのだった。

一瞬、何が何だか分からなくなり混乱するが、よく辺りを見回すと、異動してきてから約ひと月、もうだいぶ慣れてきたいつもの景色――女の子の部屋らしい、ぬいぐるみや電子ピアノが置かれている綾音の部屋の一角、彼女の机の上に置かれた古びた指令基地“ミクロマン新Iwaki支部”(仮)の大型メインスクリーンの前――であることに気が付く。

そうだ、自分は今日も暇な仕事の一部、外にパトロールに行っている仲間マイケルからの定期連絡を待ち、聞かされた内容の記録をつける仕事をしているところだったのだ。それが昼食の後と言うこともあり、暖房の利いた綾音の部屋で連絡を待っている間、ボーっとしているうちにうたた寝をしてしまっていたのである。

巨大・新Iwaki支部の出来事は、なぁんだ、夢の世界のことか・・・。

「新人、どこ行った! 聞いてるのかよッ⁈」床に座り込んでいるアリスの頭上、夢の世界に出てきた壁一面の大きさを誇る巨大スクリーンの足元にも及ばない、小さな小さなメインスクリーンから、変わらずがなり立てるマイケルの声がした。

「ハイ! ハイハイ、ハイ。聞いてます、聞いてますよ、マイケルさん」アリスは気を取り直すと、何食わぬ顔でシートに座り直す。

「おい、新人! なんか口によだれ付いてるんじゃねぇか⁈ まさか、おめぇ、昼寝してたんじゃねぇだろうなぁ~⁈」操縦席のカメラに顔面を近づけ、こちらを覗き込んでくる青いミクロスーツのマイケルを見て、顔を少し遠ざけるアリス。「そんなわけありません。勤務中ですし」最近、段々と彼が分かってきているアリスである。へたにこちらが不利になる様な発言をしたり、戸惑っている様子を見せると、尚わざとからかい半分に突っ込んでくるのだ。こういう時は、自然体で何事もないようにすませて見せるに限る。

「こちとら、この寒い中、屋根もドアもないニュー・ビームトリプラーでおんもをパトロールしてんだ。暖かい部屋は良いよなぁ~、ズルすんじゃねぇ~ぞ~」もう春は近いと言っても、まだ寒い3月の曇った寒空だ。彼の言うことに間違いはない。

「ハイ! 寒くて大変な中、本当にご苦労様です!」一応、社交辞令を棒読み台詞で返すアリスであった。

 

◆お姉ちゃんへの日記 2021年3月〇〇日◆

『青いミクロスーツのマイケルさんは、いつもこんな感じです。ガサツでデリカシーがないと言うか~(-_-;) でも、新Iwaki基地の中では何事に対しても一番パワーがあって、やる気満々、皆を引っ張っていくタイプだし、頼りにされてるんだよね。

・・・ところで、私がうたた寝した時に見た夢、なんだろうね? レスキュー隊員養成学校で検査を受けた時、予知能力的なものを持っている可能性があるとドクターに告げられたことがあります。自覚はありませーんv(^▽^)v でも、ドクターにそう言われるとさ、その後に起こることを前もってどこか似た内容で、夢の中に見たことが時々あった気がするような、しないような・・・? まぁ、今回のは“こんなスゴイ基地に勤められたらいいなぁ~と言う願望が夢に出たのかな”って思うことにしときます(((uдu*)ゥンゥン』

 

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アリスは夜、オフの時間になると、PCモードに変化させた愛用のモバイルブラスターを床(綾音の机の上)に広げ、自らも座り込み、キーボードを素早くタイピング。いつも書いている“お姉ちゃんへの日記”の今日のぶんをあっという間に書き終えたのであった。

机の上で作業したくとも、指令基地にデスクスペースはない。ミクロマン達は綾音の机の引き出しの中を仕切り板で区切り、区切った一角一角を各々の寝床(名前だけプライベートルームと皆は言っている)にしているような状況である。今のところ。このような始末だったので、アリスには一人くつろいで日記を書けるような空間がなかったのであった。

 

 

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――「あー、あのぉー。メイスンさん、メイスンさん?」ある日、アリスは赤いミクロスーツ姿のメイスンが、綾音のピアノの鍵盤の上に銃器を広げメンテナンスをしているところに声を掛けた。彼女なりにスキンシップを図ったのである。どうもこの男、ほとんど口を利かないので、知り合ってからひと月近くも経つのに、無口で銃器を扱うのが得意と言うこと以外、何もわからない。

「なんだ?」後方に立つアリスに振り返りもせず、黙々と銃器を布で磨くメイスンに苦笑いをする彼女。「うんと、えっと・・・武器のメンテ、よくされてますよねぇ?」

「自分で使うものだからな」やはり振り返りもせず、そう答えただけで、話を終えてしまう赤いミクロスーツの男。

「・・・・・・」この間、声を掛けた時もそうだった。こんな風に受け答えがイチイチ簡潔すぎるのだ。

「えーと、あの、この間のアクロイヤーとの戦いで、メイスンさんのマシーン、壊れちゃったじゃないですかぁ。これから、どうするんですか?」

「他所からどうにかして調達するつもりだ」返答だけボソリ。

「・・・・・・」待ってみても具体的な話には発展させてくれない。アリスは、どう続けていくかと困り出してしまった。前回はこの流れであっという間にトークが終了してしまったのである。そうだ、ここで引き下がっては元の木阿弥だ。よぉし、こうなったら、自分の方からどんどん話を膨らませないとダメだぞ、とアリスは覚悟を決める。

「調達ですか! じゃ、あの紫色のスーパージェット・ライトは?」

「折を見てアイザックが直すそうだ」

「結構、壊れ方が酷かったから、直すの大変そうですよね!」

「そうだな」

「うちの支部って、基地の資材どころか、まだまだマシーンに使う予備の部品やらなんちゃらも殆どないですよねぇ」

「だな」

「早く手に入れたいですよね」

「ああ」

「いろんなこと、これからどうなるんでしょうかねぇ?」

「どうなるんだろうな」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

これほど話が続かない相手と接したのは生まれて初めてである。この後、少し様子を窺ったが、メイスンはやはり黙ってしまい、何も話を続けてくれはしなかったのだった。トホホホホ。仕方ない、アリスは今回もあきらめようと、その場を去ろうと振り返る。その時のこと。

「アリス隊員」

「えッ⁈ なんですかぁ~!!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「間違ってグリスぶちまけたから気を付けた方がいい」

足元が滑りやすくなっていることを知った時には、アリスは既にひっくり返っており、足元の鍵盤に勢いよく臀部を叩きつけ、綾音の部屋に「ソー♪」の音を響き渡らせてしまっていたのであった。Ω\ζ°)チーン

 

◆お姉ちゃんへの日記 2021年3月××日◆

『赤いミクロスーツのメイスンさんはいつもこんな感じです。滑らないよう注意してくれたし、悪い人ではないとは思いますが、今のとこ他はな~んも分かりません┐(-_-;)┌ヤレヤレ』

 

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この日もアリスはPCモードに変化させた愛用のモバイルブラスターを床(綾音の机の上)に広げ、地べたに座り込み、キーボードをタイピング。あまりにも語る内容がなさ過ぎることから、“お姉ちゃんへの日記”をものの3分で書き終えたのだった。

アリスは痛めた自分のおしりをさすった。

 

 

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――「いやぁ、大量、大量! 実に結構なことであ~る!」緑色のレッドパワーズ部隊仕様のミクロスーツを身にまとうアイザックが、アルティメット整備工場内に山となった大量のガラクタを前にして、嬉々として手を揉んでいる。

アリスはと言えば、旧Iwaki支部から運んできたポンコツの機材類を、ヒイコラ言いながらサーボマン・ウェンディの高所作業車から降ろしていたのだった。荷台代わりにされた作業車の上から、人型に変化したウェンディ、そして同じくサーボマンのアシモフも荷物を次々に降ろしているところだ。この日、アイザックの指示で、アリス他サーボマンの二体は、水石山の旧Iwaki支部を探索、まだ使えそうな機材類を新Iwaki支部に搬送する仕事を手伝わされていたのだった。

アイザックの説明によると、基地設備を広げ充実させるための様々な資材提供についても、新型メカの再導入についても、予定はまだ全然未定のまま、何の進展も見られそうにない、のだそうである。本部だけでなく、知り合いがいる他の基地にも連絡を入れ、マックス達はなんとかならないものかと交渉中でもあった。

事前の用意や再開スケジュールもへったくれもない、半ばこちらの面々が言い張って無理やり早急に始めてしまった新Iwaki支部である。それにアクロイヤーや青い戦闘型ロボットの動向もある。仮に資材や新しいメカを本部などからもらえることになり、搬入できる流れが生まれていたとしても、目立つ動きは出来ないことから、こっそりと徐々にしか運び込めないし、どの道すぐには発展できない状況でもあった。

これらの事情から、自分たちのことについては、しばらくは自分たち自身で、外部に目立たぬようコッソリと隠れつつ、なんとかしなくてはならない、という話である。それについては、仕方がないことだと誰も異論は唱えなかったものだ。

が、だがしかし。この目の前に広がる、役に立ちそうもないガラクタの山は一体なんなのだ。再利用して新Iwaki支部に役立てると言うことであるが、このとても資材とは思えないポンコツを、手が空いている者はこの間から、ちょくちょく少しずつ運ばされているのである。アリスは深いため息をついたのであった。少し前にメイスンの前で話題に出した資材の確保はどうなるのだろうかという心配話が、まさかこのような形で解決に向け動き出すとは。重いものを持ち、少し痛めた腰に手をやると、なんだか情けない気持ちがわいてくる気がしたのだった。

「腰さ大丈夫けぇ、アリス隊員?」透明な頭部から見える内部メカニックがチカチカと光る、いわき弁サーボマン・アシモフがいつの間にかアリスのそばに来ており、急に彼女のおしりを撫でた。

「キャッ!! どこ触ってんのよッ!!ヽ(`Д´)ノ」アリスは飛び上がる。「そこは腰じゃないでしょう⁉」アリスはアシモフを睨め付けた。アシモフは頭部のメカを光らせるだけで、何も答えない。すっとぼけている。

クンクンとアリスは周囲の匂いを嗅ぐ。ミクロ化し、そばのポンコツ類をオモチャ代わりにしている辰巳の身にした衣類から、強い柔軟剤の匂いがした。「これか・・・」アリスは何とも言えない表情になる。

基地内の様々なサポートを任せられているアシモフは、ミクロマンに忠実で礼儀ある超AI搭載のロボットだ。それがどうしたことかこのロボット、強い香料(洗剤、柔軟剤、匂い消し、香水等)を検知すると電子頭脳がまるで酔ったようになり、酔っ払いのごとく言動がおかしくなるのだ。特に女性に対してこのようなセクハラ行為を行ったり、求婚発言を見せたりして周囲を困惑させる。アイザックが調べてもどうしてか原因不明とのことであった。なので、現状、この新Iwaki支部にいる女性はアリスと綾音だけということもあり、特にいつもそばにいるアリスがそのターゲットにされてしまうのであった。

 

「ねぇねぇ、アイザック?」「なんであるか?」

「これってアクロイヤーの手下や悪いロボットなんでしょう?」「そうである」

「怖いねぇ~、動かないの?」「大丈夫、壊れているからなんともないのだ~」

アクロ兵の取れてしまっている手のパーツで、TV放映で観たアダムスファミリーのマネごっこをして遊んでいた辰巳が心配してアイザックに尋ねたのも、わかる気がする。アリスはガラクタの山の一部に集められた、ここ最近の戦いで新Iwaki支部の面々が倒したアクロイヤーのメカ類を眺めた。

「これ、罠が仕掛けられていて、急にゾンビみたいになって、ここで暴れ出すとかないですよねぇ~・・・?」少し声を震わせながら、アリスもまたアイザックに質問する。

「大・丈・夫!! アリスくん、心配ご無用だ。これを見たまえ!!」アイザックは大きめの牛乳瓶のようなガラス容器を手にした。中には自然光に反射する、煌めく細かい青い砂(?)のようなものが大量に詰まっている。「これは吾輩が発明した、ミクロクリーンナノマシン。倒し、活動を停止したアクロイヤーのメカに振り撒くことで、我々に害をなす、例えばアクロ・プログラム、発信器、盗聴器、時限爆弾、仕掛けられたトラップ等々を、種類問わずに瞬時に調査、発見、即・完全無効果し、安全でクリーンな機械部品にしてしまうと言う素晴らしい発明なのだよッ!! ここに運ぶ前に、既にこれをフリカケふりふりしてあるのだッ!!」

自画自賛、唾を飛ばしながら自慢げに説明するアイザックをポカーンとして見つめるアリス。

「我々は今、少しでも多くの役に立つような機材類が必要だ。譲ってもらうよう他の土地の仲間と交渉するのも大切だが、まごまごしている暇はない。現地調達と言うのも手段のひとつなのである。なので、旧Iwaki支部に残されている物は勿論、こうして倒したアクロイヤーのメカも完全許容範囲内! 回収するのだ。アクロイヤーの物は我々の物、我々の物は我々の物なのだ!! プリーズ、プリーズ、どんどん回収するのである!! イッ・ヒッ・ヒッ・ヒッ・ヒ~ッ!!」

悪のマッドサイエンティストのように、低く不気味に笑い出すアイザックに、ドン引きするアリスであった。

 

◆お姉ちゃんへの日記 2021年3月△△日◆

『科学者のアイザックさんは、常に基地設備のことや、アクロイヤーへの対策を考えてくれている人です。セクハラサーボマン・アシモフや、働き者の目が可愛いウェンディと共に、マックスさんの壊れた車両の修理をしてくれてもいます。いつも何かを考えていて、一人でぶつぶつ言ったり、時にニヤニヤしたりもする、かなり奇人変人っぽいところがありますが、悪い人ではないと思います(((uдu*)ゥンゥン・・・多分・・・』

 

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この日も変わらずアリスは、PCモードに変化させた愛用のモバイルブラスターを床(綾音の机の上)に広げ、地べたに座り込み、“お姉ちゃんへの日記”を書く為にキーボードを叩く。痛みがひけたおしりに、机の表面の冷たさを感じながら。

 

 

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――「ねぇ~ん、相談があるのぉ~、マックスぅ~ん♡」綾音の部屋の隅に置かれたアルティメット整備工場の中央メインスペースにて、サーボマン・ウェンディの手伝いをしながら、廃車寸前のミクロ・ワイルドザウルスの修理に勤しむ黄色いミクロスーツのマックス。そんな彼を見下ろしながら、綾音が甘えた猫なで声をかけた。ピアノ教室から帰宅して直後のことである。

「ダメだ」何も聞かせられていないのに、いきなり断るマックスに綾音は豹変、ドスが利いた声で「まだ、なんも言ってないじゃん!」と怒りを露わにした。

ウェンディとマックスのそばで修理の様子を見学していたアリスは苦笑する。綾音は以前から聞かせられていたマックスの愛機ロボットマンが部屋にやってきてからと言うもの、興味津々、やたらとロボットマンについて色々と尋ねてきていた。マックスやアイザックは面白がって機能面なども含めて詳細に説明していたのだが、それが綾音のロボットマン熱をヒートアップさせてしまうきっかけになったようで、そのうちになんと彼女、「ロボットマンをあたしに頂戴! それか貸してよ!」とまで言うようになり始めてしまったのである。「これは新Iwaki支部にとって最大の戦力なんだ。そもそもオモチャではないので貸し出しできるものではない」とマックスは毅然とした態度で断ったのだが、それで大人しく引き下がる綾音ではない。折を見て、ロボットマンを手にしてはあちこち眺めたり、再度マックスに譲渡交渉を繰り返していたのだった。勿論、今回の目的も、明らかにそれの様子である。

狭い整備工場内を最大限に有効活用する為、現状、特に修理等の必要のないロボットマンは工場の外側に置かれていたのだが、綾音はうっとりした面持ちでロボットマンを両手で持ち上げると、自分の胸元に抱き寄せたのだった。「なんか知らんけど、この程よい大きさと言い、見たことないデザインと言い、ビビビビーンときちゃうんだよねぇ。このツルツルの丸い頭ちゃんも、めっちゃ可愛いの!」チュッ、チュッ、チュッ、と、綾音はロボットマンの頭部に何度も軽くキスをする。

「好きになってもらって、ロボットマンも嬉しそうにしていますね」サーボマン・ウェンディが綾音を見上げながら言うと、「そんなことあるわけない。ロボットマンはAIを搭載した自律型ではないし、パイロットの指令だけを読み取って動くロボットだからね。好かれていることを感じ取ったりなんてしないんだ」と大真面目にマックスが答えた。

「マックスさんて本当に真面目ですよね」アリスは彼に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で感想を口にする。マックスは真面目なのはいいのだが、面白みがない男なのだ。

「AIが搭載されている・いないに関わらず、メカにも、愛情をもって接してもらえているのかいないのかを感じ取る何かはあるのではないか、と私は思います」小さな両目が可愛らしいサーボマン・ウェンディの言葉に、マックスは何とも言えないような複雑な顔をして黙り込んでしまったのであった。

 

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「ただいまなのであ~る。お、綾音、ピアノ教室から帰ってきたのであるな。ちょうど良かったのだ!」綾音の部屋の窓がガラリと開いて、そこから一羽の赤い色をした鳥型メカと、黒と青の二体のネコ科動物を模したメカが入ってきて、出窓で立ち止まった。鳥型にはアイザックが跨って乗っかっている。

「え、なになに⁈ この動物ロボは⁈」即、新しい客人に綾音は興味を示し、ロボットマンを抱きかかえたまま出窓に向かった。いずれも初めて見るマシーンだ。鳥型は鳩ぐらい、ネコ科型は幼い子猫ぐらいの大きさである。

「この三体はミクロマンの仲間、マグネアニマルと言う。鳥はハリケンバード、黒いのはマグネジャガー、青いのはマグネクーガー。超AIを搭載した、動物型のスーパーロボだ。ここだけの話、某所にいたところをヘッドハンティングして来てもらうことにしたのだ。正規ルートを通していたら、話にならない。彼ら、先程ようやく追っ手(?)を逃れていわきに到着したのである。本部や他の基地には内緒であるぞ⁈」

「ヘッドハン・・・何それ? よくわからんけど、スゴイじゃん! 仲間が増えて良かったね!」

「ウム。それで、皆とも先に相談していたのだが、これらを綾音、キミの護衛に付けようと思うのだ」

「護衛⁈ 守ってくれるって言うこと⁈」驚いたように目を真ん丸にする少女に、アイザックは大きく頷いた。

「その通りだ。キミはこれまでアクロイヤーと数回にわたり遭遇、危険な目に遭っているし、今後も何かに巻き込まれないとも限らない。いや、我々の仲間である以上、何かに巻き込まれることは覚悟してくれ。何かあった場合、その都度、我々が救助に行ければよいが、前回のようにそれが可能とも限らない。だからこその護衛なのだよ」

「護衛ができれば、ロボットマンは必要ないだろう?」いつの間にやら工場の出入り口から顔を覗かせ、話を聞いていたマックスがボソリと言う。

それを聞いて、綾音は眉間にしわを寄せ、ロボットマンとマグネアニマルを天秤にかけているような、悩ましい顔になった。

 

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「もうひとつ君にあげるモノがあるのだ。綾音、机の一番大きな引き出しを開けてみてくれなのである!」綾音はアイザックに言われた通り、自分の学習机の引き出しを開ける。すると中に、見たこともない黒いデジタル腕時計がしまわれているのに目が留まった。本体表面の上半分にはデジタルディスプレイが、下半分には銀色のプレートがはめられていて、そこには古代エジプトの鷲の様なマークが刻印されている。女子小学生向けなデザインではないが、TVで観ている大好きな変身ヒーローが身につけていそうな物で、綾音は率直にカッコイイと感じたのであった。

「これは?」

「吾輩が作ったミクロウオッチである。一見すると単なるデジタル腕時計だが、通信機能が搭載されていて、いつでも我々と交信が可能だ」

「へぇ・・・!」

「それだけではない! もうひとつ、すごい秘密が隠されているのだ!」

「何なに⁈」

「これを腕に付けた状態で、“ミクロ・チェンジ!”とコマンドを口にすれば、キミはミクロ化することが出来る。もう一度唱えれば、元の大きさにも戻れる。しかも、ミクロ化している間は、アクロイヤーに正体がバレないよう、カモフラージュ・シールド機能が自動的に身体に展開、キミを別人、ミクロマンのひとりに見えるようにもしてくれる優れモノなのだ。このメカは綾音、キミの生体反応と声紋にしか反応しない作りになっている、まさしく君の為に用意された、キミだけが使える、キミ専用のスーパーメカニック腕時計なのであるッ!!」

綾音は大きな目をキラキラと輝かせる。「す・ご・い! 信じられない・・・! こんなカッコイイ腕時計をありがとう!」

工場の方から再びマックスが声を掛けた。「これでいちいち僕がいないとミクロ化できない、と言うことはなくなるわけだ。どうしてもミクロ化する必要ができた時にだけ使うんだよ。ただ、使用回数に制限がある。エネルギーが切れたらチャージする必要もあるんだ。だから、乱用はダメだからね」

綾音はマックスに振り返り、笑みをもらした。「ありがとう、マックス。仲間として、あたしのこと色々と考えてくれていたんだね!」それを聞いてマックスも笑顔になる。しかし。「でも、ロボットマンの件と、この時計やアニマルのことは別だよ!」それを聞いて、マックスは思わず体勢を崩してひっくり返ってしまったのであった。

 

綾音を含むミクロマン達の更なる話し合いにより、黒いマグネジャガーは常に綾音の護衛に、青いマグネクーガーは万が一を考えて常に辰巳の護衛に付くことになった。

ハリケンバードについては、空から子供たちの守りに、あとはいわき上空のパトロールを兼務させられることとなったものだ。

アイザックの話では、ひと目に付くような時には彼(?)らもその体にカモフラージュ・シールドが展開、普通の鳥や子猫に偽装するとのことであった。

 

この日も変わらずアリスは、綾音の机の上で“お姉ちゃんへの日記”を書こうとモバイルブラスターを広げようとする。その時、母親の迎えで保育所から帰ってきた辰巳が部屋に飛び込んできた。母親の用事と、スーパーでの買い出しもあり、いつもの帰宅時間よりも遅くなったようで、時計は既に19時を回っている。

辰巳は唐突に、手の中の物をアリスに差し出してきたのであった。「これ、ママに買ってもらったの。アリスお姉ちゃんにあげるね」それは、100円ショップで売られていた、ミニチュアの学校机とイスのセットであった。「え、いいの⁈」「うん。だってアリスお姉ちゃん、お仕事するのに机なくて大変だなぁって、いつも思ってたの。これがあれば便利でしょう⁈」

アリスはこんな幼い辰巳が気を使ってくれたことが、その優しさがあまりにも嬉しくて涙が溢れてきたのであった。「ありがとう・・・! 辰巳くん、本当にありがとう! お姉ちゃん、お仕事がんばるからね!」

幼い辰巳は満面の笑みで、優しくアリスを見つめていたのだった。

 

◆お姉ちゃんへの日記 2021年3月□□日◆

『リーダーのマックスさんは、生真面目な人です。でも、綾音ちゃんのことは何だかんだ言いながらも可愛く思ってるみたい。綾音ちゃんや辰巳くんはまだまだ子供だけど、私たちのことを本当に仲間と思ってくれているし、何か役に立ちたいといつも真剣に考えてくれている、本当に良い子たちです。皆ふたりのことが大好きみたいだよ。私も大好き。こんな風にまだまだ小さな新Iwaki支部だけど、私はどんどんココが好きになってきています!!(#^^#)』

 

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ちょっぴり大きめサイズの机ではあるが、アリスは辰巳にプレゼントされたこのミニチュア学校机とイスを、生涯大切にしようと心に誓ったのであった。

 

〔次回につづく〕

 

 

次回、『第7話・ロボットマンはもらったよ!』に、君もミクロ・チェンーーージッ!

次回予告(6)+【登場人物&メカの紹介⑤】

【登場人物&メカの紹介⑤】

 

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人物◆アイザック(男性クローン・ミクロマン

今から何年も前、アクロイヤーの破壊工作から地球を救ったミクロマン・マグネパワーズ(レッドパワーズ)部隊。しかし、彼らが取り戻した平和もほんのわずかの期間続いただけで、その後、世界各地で別のアクロイヤーが頻々と事件を起こし始めたのは周知の事実だ。

年々増え続けるアクロイヤー事件に対処する為の新メカ開発に、多くのメカニックマンが必要とされたことから、ミクロマン富士山麓本部直々に、そのマグネパワーズに所属していた天才科学者エジソンをクローン化、多数のクローン・ミクロマンが誕生した。そのうちの一人が、アイザックである。

いかにも科学者風のいで立ちの彼は、エジソンにうりふたつ、どこか気難しく少々変わりものの性格もそっくり受け継いでいる。メカの開発や発明、修理について彼の右に出る者(同じクローンを除く)がいないほどの天才で、誕生して以来、現在までに多数のミクロマシン等を生み出してきている。彼が身に着けるミクロスーツは、地球にいた頃のエジソンが最後に装着していたレッドパワーズ仕様の物を再現したものだ(注:エジソンは現在、別の惑星で任務にあたっている為、地球にはいない)。残念ながら戦闘能力は無いに等しく、彼が戦闘に参加することはほとんどないと言っていい。愛用するのは右腕前腕部に装着したマグネスタック。どのようなメカも分解・修理してしまう万能工作機である。

新Iwaki支部では、ラボ、ファクトリー部門を兼務担当。

尚、2011年4月11日に戦死した(旧)Iwaki支部所属のミクロマン・マリオンは、同じくエジソンのクローンであり、アイザック同様の容姿と性格をしていたという。

 

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人物◆アリス(女性ミクロマン

ミクロマン・レスキュー隊員養成学校を出てまだ間もない、新米の若年女性ミクロマン。2011年4月11日に(旧)Iwaki支部の危機を知り、たった一人ロボットマン2で救助に向かい戦死した女性レスキュー隊員ドロシアは、彼女の姉だ。尊敬していた姉の志しを受け継ぎ、姉が最後に守ろうとした地を代わりに守りたいという強い想いから、新Iwaki支部への所属を希望した(それまでは富士山麓本部で新米隊員として雑用を任せられていた)。

性格は現代っ子で、外交的。まだ幼さが残っており、どこか夢見がち。ミスも多いが、失敗を取り返そうともする芯の強さを持ち合わせている元気娘である。そのようなキャラの持ち主かつ容姿の可愛さも相まって、新Iwaki支部ではみんなの妹分的存在となる。

破壊光線銃にもなるモバイルブラスター(人間がひと昔前に使っていた携帯電話に酷似したデザインをしている)は、情報収集・分析、通信機と言ったインテリジェンス部門で必要とされるあらゆる機能を兼ね備えた携帯型万能コンピュータだ。

オフの時、アリスは“お姉ちゃんへの日記”と名付けた、姉が生前アリスとのみメール交換していた個人アドレス宛に日頃の出来事や想いを綴った文章をこの機器で打ち、――決して返事がこないことを知りながら――送ることを密かに心の糧にしている。

新Iwaki支部では、インテリジェンス、メディカル部門を兼務で担当。

 

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メカ◆アシモフ(男性型サーボマン)

サーボマンとは自律型・超AIを搭載、会話も自ら考え動くことも出来る、ミクロマンの命令を忠実に実行するスーパーコンピューターロボット(大きさは基本ミクロマンサイズ)の総称である。

そのサーボマンとして誕生したアシモフは、男性脳プログラムが施されていることから、言動は誰もが連想する中年(?)男性のそれに近い。開発責任者はアイザック。彼が新Iwaki支部に転属するにあたり、本部の計らいで、人手不足の新Iwaki支部に異動、配備されることとなった。

様々な知識をインプットされた小型で小回りの利く彼は、インテリジェンス、メディカル、ラボ、ファクトリーと言った基地の各部門すべてをアシストする役割を担っている。ついでに家事や、基地に遊びに来る辰巳の子守もするなど、いろんな面で大活躍だ。

どうしてか、強い香料(洗剤、柔軟剤、匂い消し、香水等)を検知すると電子頭脳がまるで酔ったようになり、酔っ払いのごとく言動がおかしくなる。特に女性に対してスカートめくりをしようとしたり、求婚発言を見せたりして周囲を困惑させる。女性隊員が少ない新Iwaki支部では、当然(?)アリスがターゲットにされること多し。

いわきに来るにあたり、気を利かせて“いわき弁”になるよう方言アプリを自らインストールしたことから常に訛っている。

 

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メカ◆ウェンディ(女性型サーボマン)

サーボマンとは自律型・超AIを搭載、会話も自ら考え動くことも出来る、ミクロマンの命令を忠実に実行するスーパーコンピューターロボットの総称である。

そのサーボマンとして誕生したウェンディは、女性脳プログラムが施されていることから、言動は誰もが連想する若い女性(?)のそれに近い。開発責任者はアイザック。彼が新Iwaki支部に転属するにあたり、本部の計らいで、人手不足の新Iwaki支部に異動、配備されることとなった。

ミクロマン世界、人間世界問わず、地球上におけるメカやマシンのあらゆる設計図やデータがインプットされている。メカニックマンとしても超一流の技術能力を与えられている彼女は、主にファクトリー部門を担当、アイザックのサポートに当たる。

サーボマンにしては珍しく大柄な体躯で、いかにもと言うロボットロボットした見かけとは裏腹に、美しい女性声帯をしており、ポニーテールが自慢、仕草もとても女性らしい。母性が強いせいもあってか、綾音や辰巳が懐いている。

ミクロマン・マックスに恋心を抱いており(第5話参照)、時折、意味もなく彼の周囲にいることがある。いつか彼をパンチ化(全身メカニックのサイボーグ化のこと)、パワーアップしてあげようと狙っ…想っている節がある(?)。マックスの愛機であることから勝手にライバル視しているロボットマンを、メンテナンスする時は嬉々としてバラすことが多いらしい(?)。

両腕は、どのようなメカも分解・修理できてしまう万能工作ハンドになっている。武器は装備していないが、いざと言う時にはその両手の工作機・機能を武器代わりにして戦うことも可能。

 

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メカ◆ウェンディ・カー(ウェンディが変化した車両形態)

サーボマン・ウェンディは、カー形態に変化できる。工業用で使用される乗り物と同等の能力とパワーを持ち合わせているのみで、他のミクロマシンのような戦闘能力や武装は持ち合わせていない。

マックス、アリスやミクロ化した子供は喜んで乗せるのに、何故か他のミクロマンを乗せることを快く思っていないらしい(?)。

後部に専用のミクロ高所作業車を合体させ、格納庫や整備工場内を牽引して動くことがある。

 

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メカ◆ミクロ高所作業車(ウェンディに合体する昇降機)

格納庫、整備工場内にて活用されている昇降機である。リモートでも動かせるが、大体はウェンディが移動させてくれる。自律プログラムなどは組み込まれていない。

 

 

ピンク色したミクロスーツの新人アリス。新しく訪れたいわきの地にて過ごす、彼女のその日常とはいかなるものか――⁈

 

次回、第2部 “チェンジ!ミクロ探偵団 編”、ついに開始! 『第6話・承前、アリスの日常』に、君もミクロ・チェンーーージッ!

第5話・新Iwaki支部、始動!<part.3>

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ニュー・ビームトリプラーで砂浜やその上空を所狭しと飛び回り、着実に敵を打ち倒しているマイケル。ビークルは失ったものの、全身にアタッチメントベルトを施し携帯してきた様々な射撃武器で応戦するメイスン。二人は、着任したばかりの面々を守ることも決して忘れてはいない。

ミクロマン達の必死の抵抗により、先ほどよりも敵影は少なくなってきてはいた。だが、アクロ兵やアクロメカロボの数はまだそれなりにあり、油断できない状況であることに変わりはない。だから、まだ使えるはずの戦闘車両ミクロ・ワイルドザウルスをここで放棄するわけにはいかない、それは自殺行為だ、とマックスは思う。自ら戦力を減らすくらいなら、今のこの状況から脱する策をひねり出す方が得策なはずだ。

マックスの真下では、ヘルピオンのスコーピオン・ドリル・テイルが高速回転しており、機体をどんどん掘り進めている。あれこれと、のんびり考えている時間はなかった。

彼は操縦席の操作ディスプレイに指を伸ばす。タイヤでの物理走行が不可能なら反重力ジャンパーで勢いよく飛びあがり、無理矢理にでもモンスターを引き離せるのではと思いついたのだ。だが、そう考えた矢先、状態異常のアラームが鳴り響き、ディスプレイに警告画面が表示され愕然としてしまう。ジャンパー装置が今まさに行われているドリル攻撃で破壊されてしまったのだった。

どうする? フロントライトのビーム砲は前方にしか撃てないから、真下に位置する敵には攻撃不可能である。ましてや車体の両サイド、タイヤの外に突き出している近接武器スパイクホイールなど論外。

自分に活を入れるように、マックスは大きな独り言を口にした。「何とでもする!」操作ディスプレイパネルをタップ、機体真下の四隅に設置されている補助バーニア(本来であれば、山岳調査中に何らかの事情で飛行を必要とした時に飛び上がる為の補助的な飛行装置)がまだ起動することを確認すると、すぐさま点火したのだった。ミクロ・ガトリング砲をパージしたぶん機体は軽くなっていたが、代わりに真下から抱き着く重い巨大サソリのオマケがついてしまった為、ガトリング砲を搭載している以上に荷重が掛かっている。マックスはやぶれかぶれに、補助バーニアの出力を徐々に上げていったのだった。凄まじい噴射音がし、ミクロ・ワイルドザウルスが砂浜から空へとむけて少しずつであるが飛び上がり始める。

「無駄なあがきだ! バンパイザー、やつを止めろ!!」デモンブラックが叫ぶと、防風林の中に隠れていたコウモリ型アクロモンスター・量産型バンパイザーが現れ、戦闘車両に向かった。飛び上がってまだ間もない瞬間だ、勢いがついていないため、ミクロ・ワイルドザウルスはサソリに続いて、あっという間にコウモリにまでまとわりつかれてしまう。重みから地面に引き戻されるように、ガクンと下がり出す車体。

だが、マックスはあきらめない。補助バーニアの出力をどんどん上げ、最後はレッドゾーンにまで届く最大値までアップさせた。すると、なんという底力だろう! ミクロ・ワイルドザウルスは二体の巨体モンスターを連れたまま、一直線に空高く飛び上がったのである。

 

マックスには考えがあった。操縦桿を握りしめ、潮見台屋上にミクロ・ワイルドザウルスを飛ばす。弧を描いて飛んで行く戦闘車両は、すぐに潮見台にたどり着いた。マックスは愛車をそのまま、先ほどメイスンがいた鉄製の落下防止柵の柱と柱の間に飛び込ませる。柵の隙間は、車体の全幅よりほんの少し広いだけ。そこに飛び込んだのだ。余計なお荷物である二体の量産型アクロモンスターは柱に行く手を阻まれ、鉄柱を歪ませながら落下防止柵に引っかかる形でミクロ・ワイルドザウルスから引き離されたのであった。

肝心のミクロ・ワイルドザウルスはと言えば、敵を振り払ったものの、勢い余って屋上展望スペースの反対側の柵まで飛んで行き、激突! バウンドして空中を回転しながら柵の外に飛び出してしまう。だが、機転を利かせたマックスの瞬間的な判断力と操作により、潮見台の砲身のように飛び出ている展望ポイント通路の真上、屋根状に張り巡らせてある柱にうまく着地、下に見える海に落ちずに済んだのであった。

 

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潮見台、展望ポイント

冷や汗ものだったが、自ら課した言葉通り何とかしたマックス。ホッとしたのも束の間、画面からまた警告音が鳴り出し、補助バーニア4つとフロントのビーム砲装置が先の激突から異常を起こし使用不可になったことを知った。

バサリ・・・バサリ・・・バサリ、と、大きな翼を羽ばたかせる音が、飛び込んできた柵の向こうから聞こえてくる。「一難去ってまた一難」マックスはぼやいた。空の上に、黒い上半身には巨大なコウモリの翼、ピンク色の下半身にはサソリの長い尻尾を持つ、まさしく誰もが想像するようなデビルの姿をした奇怪な巨大モンスター・ロボットが現れたのだ。その右肩には、砂浜にいた黒いデモンタイプ・アクロイヤーが仁王立ちでとまっている。彼の愛車に先程までしがみ付いていた二体のアクロモンスターが、追いかけてきたデモンブラックの命令で合体、巨大な悪魔の姿をした人型ロボットとなり、マックスの命を狙って再び襲い掛かろうとしていたのであった。

 

――ミクロマン達は全員、三崎公園に行っており、この前みたいに助けには来てくれない。自分のことは自分で守るしかないのだ。相手は妖怪でもお化けでもない、機械人形なのである。怖い気持ちがないと言ったらウソになるが、正体を知った今となっては、この間のような震えあがるまでの恐怖には至らずにいた。おかしなものだが、“得体が知れてる相手”なら「なんとか出来るかもしれない」という、変に希望めいた気持ちが湧いてくる部分もあった。綾音は覚悟を決めると、手にしていた薄紫色のピアニカケースを両手で構えた。

なんとか逃げ出すチャンスを作らなくては、と、綾音は元いた遊歩道へ向けて後退りをする。

緑色のアクロモンスター・イグナイトは、綾音との間合いを狭めようと、一歩一歩、着実に前進してきた。綾音は見た目からして、相手の動きがもしかしてトロいのではないかと推測、思い切ってピアニカケースをロボットイグアナに向けて投げつける。さすが大好きなドッヂボールでならした腕だ。ケースはイグナイトに向け一直線に飛んで行った。しかし、イグナイトは信じられないほどの瞬発力で高く跳躍。少女の頭上を余裕で通り越し、その背中側にある芝生に着地したのである。驚き振り返る綾音は、逆にイグナイトがもといた方、大木や植木が密集してて身動きが取れない方へと後退りすることになってしまった。退路を奪われてしまったのである。

「まずい・・・」どうしていいか分からなくなる綾音を冷たい目で見つめるイグナイト。モンスターの双眸が、黄色くボンヤリと輝きだし、すぐにボワンボワンと光が強くなったり弱くなったりを繰り返しだした。山の神社の時と同じだ。綾音に戦慄が走った。

 

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――「ねぇ、ヘルパイザー? ミクロマンの車もだいぶ壊れてしまったみたいだし、あれじゃあもう役に立ちそうもないよねぇ? 逃げ場もないみたいだし、あいつはどうするんだろうねぇ?」デモンブラックが、わざとらしく悪魔ロボットに話しかける。マックスにも聞こえるように、だ。恐怖を煽り立てようとしているのか、はたまた馬鹿にしているのか。

しかし、意味合いがどうあれ、デモンブラックの言っていることに間違いはなかった。ミクロ・ワイルドザウルスは大破、戦闘機能をすべて失っていると言ってよい。車を放棄して逃走しようにも、足元は何もない空間ばかりが広がる展望ポイントで、後ろは断崖絶壁、周囲は海ばかり。隠れたり、逃げ込むような場所がない。自身の身に宿る、超能力の反重力ジャンパー能力により飛んで逃げたとしても、ヘルパイザーと呼ばれた悪魔型ロボが瞬時に襲い掛かってくるか、デモンタイプが例の右手の爆裂光弾で狙い撃ちしてくることだろう。

バンパイザーかヘルピオンのみ、もしくはデモンタイプ単体のみが相手と言う状況なら、この間のバンパイザー戦のように一人でもなんとかなるかも知れない。しかし、今アクロモンスターどもは合体してエネルギーとパワーを上げた人型に変化しているし、そばに指揮官クラスのアクロイヤーまでいるときてる。さすがのマックスでも分が悪かった。チラリと砂浜の方を見たが、まだ戦いは続いており、連絡したところですぐ援護は受けれそうにもない。

黄色いミクロマンの心情を察し、デモンブラックは嘲笑したのだった。

 

――イグナイトの催眠光線を目の当たりにして、綾音の意識は段々と朦朧として来ていた。こんな風にされているうちに、もうすぐ何も分からなくなって、自分はどこかに連れ去られてしまうのだ。多分、普通の子供である自分は、アクロイヤーの探している目的の子供なんかではないから、すぐに解放されると思う。でも、こんな風にわけを分からなくされて好き勝手にされるのは、やはり凄く嫌だった。今まで被害を受けた子供たちも、記憶を消されたからと言って、何の問題もなくその後、生活しているわけではないはずだ、と綾音は思う。“記憶が無くなったという経験”を消せずに、どこか心にシコリをもって生きているはずなのだ。LINE友の陽斗に相談してきた奈月が、まさしくそうだったではないか。自分もそうなるのは嫌だ、と、綾音は消えかかる意識の中で思ったのだった。悪魔の神隠しなんかには遭いたくない・・・!

「誰か・・・助けに来て・・・」綾音は残る意識の力を振り絞り、心の中で叫んだ。

「分かった。いま助けに行く」声ではない、何者かの“意識”のようなものが、ハッキリと綾音の脳内に届き、響いた。驚き、朦朧としてきていた綾音の意識が再覚醒する。

 

――「マックス! 聞こえるか! そのまま走り出して、海に向かって跳ぶのである!」新型通信機から、アイザックの叫び声がした。下の仲間もマックスのピンチに気が付いていたのである。先程とは逆の立場だった。彼らがマックスを信じて崖下に逃げたように、マックスはアイザックを信じて指示に従い、ミクロ・ワイルドザウルスのアクセルを踏み込んだ。展望ポイントの格子状屋根を激走する大破した戦闘車両。ヘルパイザーがすぐさま、巨大な両翼を羽ばたかせて追いかけ出す。

展望ポイントの長さは15mほど。あっという間に端の方に到達しそうになる。「跳んだ後、どうする⁈」マックスの通信に、メカニックマン・アイザックが、手首に着けた通信機に大声で答えた。「遠くに向かって跳ぶのだ! そして飛び移るのである! 持ってきたのだ、マシーンを! マックス、君のマシーンを、だッ!! それに飛び移れーーーッ!!」

マックスは、言葉の真意が読み取れなかった。指令基地に届いていた先の連絡では、マシーンを搬送してくると言う話はなかったからだ。

それもそのはず、マックス達は知らずにいたが、実は昨日遅く、たまたま過去の記録を再確認していた本部が、旧Iwaki支部が壊滅したあと、支部から本部倉庫に運び込み、修理したもののずっと眠らせていたあるマシーンが存在していることに気が付き、それをアイザックたちに託したのである。万が一を考え、メカニックマン・アイザックが徹夜でマシーンの再チェックを行い、万端な状態での搬送となっていた。頻繁に通信を行い、アクロイヤーに怪しまれ傍受されることを恐れた本部が、マックス達には知らせずにいた為、いわきの面々はそのことを知らなかったのである。

指示通り、猛スピードを出してミクロ・ワイルドザウルスを、展望ポイントの端から、高く、遠く、ジャンプさせる黄色いミクロマン

目にもとまらぬ早業で、レッドパワーズスーツの左腕前腕部に組み込まれているコンピュータを操作、アイザックは富士山麓本部から搬送してきた“シークレット・ミクロサブマリン・コンテナ”を緊急浮上させ、ロケットのように水面から空に向かって打ち出した。外見は4リットルサイズの日本酒ペットボトルで、見た目は偽装して透明である。ペットボトルに偽装したコンテナ潜水艦は底の方からジェット噴射、飛んでいく途中で外装に幾つもの亀裂が走り、本体がバラバラになる形で徐々に分解して行った。コンテナの中に搭載されていたマシーン自体が今度はジェット噴射を行い、落ちてくるミクロ・ワイルドザウルスの方へと向かう。

 

「あれは・・・!!」自分に向かって飛んでくるそれを、マックスはハッキリと目視した。

輝く銀色の頭部(内部には、搭乗者の思考を読み取り即座に動きに反映するヘルブレーンを搭載)。

赤い色をした逞しく厚い胸(中央には透明キャノピーが取り付けられた操縦席と、その両側には必殺武器の光子波光線発射口)。

腹部に巨大なVの文字がレリーフされた白く頑丈な腰(エネルギータンクが納められ、両腰にはマッハ5の速度で飛行できるマッハ・ブースターを装備)。

ショベルカー重機を模した白い両腕(肩を軸として高速回転し、相手を攻撃するマシン・パンチ・フラッシュを行うことが可能で、その両手はダイヤモンドをも軽々と握りつぶすクラッシュ・ハンド)。

大地を踏み締め安定して立つことができる青く巨大な両脚(腰同様マッハ・ブースターを足裏に装備、状況に応じ膝から分離させて乗り物にも変化可能)。

そして、両肩に記された、忘れもしない“23”の機体番号。そう、間違いない。あれこそは、マックスがIwaki支部で長年に渡り搭乗し、どのような時も一緒に戦い続けてきた、愛機・高性能万能型ロボットーー“ロボットマン”だったのである!!

マックスはミクロ・ワイルドザウルスの操縦席から立ち上がると、今度は自分がロボットマンに向けて、跳んだ。操縦席である、胸のコクピットを目指して。

 

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これらのことは、ほんの一瞬の出来事である。だが、デモンブラックは瞬間的に状況を分析、「ロボットマンに乗せるなッ!!」ヘルパイザーに命令を下し、急いで攻撃に移らせようとしたのだった。

しかし、時すでに遅し。「パワードーム・オープン! ロボットマン、イン!!」搭乗コマンドを叫ぶマックス。ロボットマンのコンピュータは、古くから搭乗者としてインプットされてるマックスの声紋とコマンドを感知。胸にある操縦席の巨大なキャノピーを開き、そこから一条の光の束を放ちマックスを包み込むと、その光の束を引き寄せ、彼をコクピットに導き入れたのだった。マックスが内部に取り込まれた瞬間、コクピット内のディスプレイや計器類が次々に動き出し、完全起動したロボットマンの両目が眩しく光り輝く。

両腕をクロスし、次に右腕を天に向けて突き出す、超高性能万能型ロボット。

「動くぞ、この両腕が! 動くぞ、この両脚が! 僕は再び、ロボットマン・マックスとなったのだーーーッ!!」ロボットマンの口が開き、搭乗者であるマックスの雄たけびが空に轟くと、ミクロマンのシンボルでもある巨大なロボットは、ヘルパイザーに向かい突撃していったのだった。

 

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ロボットマン(初代)

――目で追うことが不可能とも思えるスピードで、クルクルと回転する水色のブーメラン状の投擲武器がイグナイトをかすめて行き、飛んできた方向に戻っていく。次の瞬間、イグナイトの背中がパックリと割れ、開いた場所から火花がほとばしりだした。

「?! ?! ?!」事態がよくわからないまま、火花に驚き綾音は尻もちをついてしまう。

少女を守るようにして、身長30cmほどの青い大きな人型の物体が、空より降り立った。ボディの上半身は猛禽類を模した形状をしている。両手には巨大なビーム・ガンのような銃器を携えており、その銃身の中央にはブーメランと思わしき投擲武器もセットされていた。いま飛んで来たブーメランだ。どこからどうみても、それは様々な武器を搭載した戦闘型ロボットであった。

綾音はこの間、ミクロマン達の話に出てきた第三勢力の存在、青いロボットのことを思い出す。そうだ、指令基地のメインスクリーンに映し出された画像でも見た“あれ”が、いま目の前にいる“それ”なのだ。

青いロボットは銃器を構えると、容赦なくビーム光を、背中が割れ苦しむイグナイトに連射で雨あられと浴びせかけたのである。

 

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謎の青い戦闘型ロボット

――ロボットマンの突撃は、悪魔ロボを後ろに吹き飛ばした。すんでのところで危機を察知したデモンブラックはとっさに離れて事なきを得、背中から悪魔の翼を模したウィング装置を展開させると潮見台に後退する。驚き怯む悪魔ロボに再びマッハのスピードで飛行し接敵すると、ロボットマンは「マシン・パンチ・フラッシュ!」と叫び、両腕を高速回転させて、何十、何百回と言う連続パンチを繰り出したのであった。あまりの威力に成すすべもなく殴られ続けるヘルパイザー。

 

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女性デモンは、想定していなかったこの展開を見て、まずい状況になったと舌打ちをした。ミクロマシーンならまだしも、アクロイヤーがその高性能の戦闘能力を長年恐れ続けているロボットマンが出現してしまったのである。眼下の砂浜にいる配下のアクロ兵団も、確認するといつの間やら10分の1程にその数が減少してしまっていた。まったくもって不利である。皆殺し、もしくは一人でも多くのミクロマンを抹殺するはずが、逆に自分の身が危険にさらされようとしているのだ。

目の前では、ついにヘルパイザーの両腕が破壊され、次に胸の装甲版がロボットマンのクラッシュ・ハンドで剝ぎ取られたところだ。ヘルパイザーは機械の絶叫を上げている。

「強いな、黄色いミクロマン! 貴様はいったい何者なんだい⁈」デモンブラックの、負け惜しみの混じった問いかけに、マックスは敢然と答えたのであった。

「名前は、マックス! 411の地獄でいったん死んだが、こうしてお前たちアクロイヤーを倒すために甦ってきた男だ!! ・・・光子波光線、発、射ーッ!!」ミクロマンが叫ぶと、ロボットマンの両胸の光線発射口から、二本の黄金色の光の束が一直線にヘルパイザーに伸びていき、一瞬にして大ダメージを悪魔ロボに与える。ヘルパイザーはその全身から火花をほとばしらせ、ついには轟音と共に爆散したのであった。

「気に入ったぞ、マックス! 私はアクロイヤーいわき侵略軍幹部の一人、デモンブラックだ! また会おうぞ!」デモンブラックの背中の翼がぐるりと彼女を取り囲むと、その姿が空中に吸い込まれ、黒い悪魔はその姿を消したのであった・・・。

マックスが眼下の砂浜を見ると、アクロ兵団を壊滅させた仲間たちが彼に手を振っていた。全員、生き残っている。マックスもコクピット内で右手を上げると、ロボットマンを砂浜へと向かわせたのだった。

 

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――高速で連射されるビーム光が、あっという間にイグナイトの外部装甲を粉々に砕いていく。信じられないほど強力な破壊力を持つ銃のようだ。青いロボは頃合いを見て引き金を引くのをやめた。半分以上、装甲が剥がれ落ちたモンスターは、内部メカが剝き出しになっており、怖いと言うよりも、ポンコツロボット然とした滑稽な姿をさらしているように見える。

青いロボは銃器を背中のハードポイントにマウントさせると素手になった。右手の4本の指を自分に向けて何度か曲げ、敵にこちらに来てみろと指図する。

ボロボロのイグナイトは瀕死のダメージを受けているのは誰の目から見ても明らかで、もう戦えないはずだった。だが、怒り狂い、「グルルルル・・・!」と恐ろし気に唸り声を上げると、最後の力を振り絞って、青いロボに飛び掛かった。

青いロボは右手でイグナイトの頭を受け止めると、軽くその動きを制した。慌てて四肢と尻尾をばたつかせて逃れようとする爬虫類ロボ。尻尾を鞭のようにしならせ、青いロボットをぶつが、相手は一切動じない。

青い戦闘型ロボットは容赦なく、右手は頭を掴んだまま、左手をモンスターの口に突っ込み下顎を鷲掴みにする。すると勢いよく両腕を広げ、あっという間にイグナイトの頭部を口から真っ二つに引き裂いてしまったのだった。更には右手に掴んだままのイグナイトを軽々と持ち上げ、四肢をばたつかせ続けるのをまったく無視、左手を手刀にしてすごい勢いでモンスターの胸に突き入れる。内部からエンジン心臓部を掴み引き抜きだし、目の前で握りつぶしてみせた。

四肢をだらんとさせ、完全に沈黙するイグナイト。青いロボは興味を失ったかのように、イグナイトだったボロボロの機械の塊を投げ捨てたのであった。

 

綾音は呆然として成り行きを見守るだけであった。何という圧倒的な強さだ。降り立った場所からほとんど動かないまま勝負を決めてしまったではないか。

青いロボはチラリとだけ綾音を見、安否を確認すると、その場を去ろうとする。「ちょっと待って!」呼び止める少女に、ロボットが振り返った。

 

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「助けてくれて、ありがとう!」綾音が感謝の言葉を告げるが、ロボットは何も反応を示さなかった。「あなたはミクロマンなの? それともアクロイヤー? 中に誰か乗っているんでしょう・・・?」ロボットは何も答えようとはしない。

ピクリとも動かない青いロボに、綾音は不思議な感覚を覚えた。決して恐ろしいとか怖いとか、そういう感じがしないのだ。悪意が何もない。このロボットは大丈夫だと言う安心感めいたものすら感じ取れたのであった。あの恐ろしく容赦がない戦いぶりを見せたのがウソのように、優しい何かを醸し出している・・・と、少女は思った。

綾音は、己の直観があることを告げたのを知った。「ああ、そうか! 分かった! あなただね、水石山の基地の中で私のことを見てたの! 同じ気配がするもん!」この時、黙っているロボットの意識が一瞬だけピクリと反応を示したのを綾音は敏感に感じ取った。「でしょ⁈ やっぱり!! 私、綾音っていうの。あなた、名前は・・・?」

図星だったようだ。ロボットが戸惑いを見せ始めている。どう出て来るのだろうと綾音が黙っていると、しばし間をおいてから、青いロボットが右の手のひらをそっと綾音に差し出して見せてきたのであった。真意はつかみ取れなかった。何を表現しているのか? 挨拶? 握手?

「・・・」先刻、脳裏に飛んで来た何者かの意識が、再び感じ取られた。声ではない。男性なのか女性なのか分からないが、とにかく“意識”なのだ。それが、このロボット自体か、中にいるかもしれない誰かなのかまでは判別つかないが、このロボットから発せられたことが分かる。だが、先ほどとは違い、どうしてだか綾音はうまくその意識をとらえることができなかったのだった。先程は朦朧としていた上に無我夢中だったので、偶然に感じ取れたのかもしれない、と綾音は思う。

「あの・・・えっと・・・」綾音が困っていると、それを見かねてだろう、ロボットは綾音を見据えて、ついに口をきいたのだった。男性でも女性でもない機械の合成音声で、こうしっかりと口にしたのである。

「“ア・リ・ア”」と。

ロボットはくるりと背を向けると宙に舞い上がり、あっという間に空の彼方に消え去って行ってしまった。「アリア・・・?」綾音は言葉を反芻しながら、呆然とそれを見送ることしかできなかったのであった。

“アリア”とは何だろう? あのロボットの名前なのか? もし中に誰かが乗っていたとするなら、操縦者の名前なのか? それともまったく思いもよらない何かを示す秘密のキーワードのようなものを教えてきたのであろうか? 綾音にはさっぱりわからなかったものである。

 

――その夜、磐城家の子供部屋に、戦いから無事に戻ったミクロマン達全員と、ミクロ化させてもらった綾音、辰巳の姿があった。それぞれ自己紹介をした後、青スーツのマイケルがふんぞり返りながらわざとらしく咳払いをひとつした。「あー、では、マックスのダンナ! リーダーからひと言お願いするぜ!」

マックスは一歩踏み出し、場にいるひとりひとりの顔を確認した。「本部からの指示もあり、新しく発足したIwaki支部・・・“新Iwaki支部”の当面のリーダーを務めることになったM123マイケルだ。メンバーはまだここにいる者ばかりで、規模としては小さい。だが、いわき市においてアクロイヤーの怪しげな作戦が実行されているのを知った今、まごまごしている暇はない。いわきと人間の子供たちを守る為、皆の力を貸してほしい」

アイザックが軽く手を上げる。「リーダー・マックス。この少ない人数で、これから我々が行おうとしていることは、かなり大変だと思うぞ?」

 

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マックスは、故マリオンがあの最後の別れ際に問いかけてきた場面と、この瞬間が重なった気がした。だから、心のどこかで悔いていたことを、――もう一度やり直したいんだ――と言う想いが溢れてきて、自然と次の言葉が出てきたのである。「・・・かも、知れない。でも、僕は“もう一度だけやってみよう”と思うんだ」そして再度、場にいる全員の顔を見、こう口にしたのだった。「大変なのは百も承知だ。でも、411の時とは違う。我々はひとりではない、みんながいる。どんなことがあったとしても、協力し合い、一致団結、平和を守る為の活動を始めようじゃないか!」

マックスをジッと見つめていたアイザックが、いきなり歯を出してニンマリとした笑顔になった。「リーダーの言う通りであ~る!」

場にいた全員が笑顔になり、拍手をしたのだった。

 

「ハイ、ハーイ、ハイハイ! 質問あるんですけどぉー。あのぉ、綾音ちゃんの部屋に基地があるって本部から聞いたんですが、どーこですかー?」ピンクのミクロスーツのアリスが期待の目で、中心に立つM12Xの三人を見た。「あれだ」無表情なメイスンが綾音の机の上の薄汚れた指令基地を指さす。

詳細は聞いておらず、立派な基地の姿を勝手に想像していたアリスは、愕然としたのだった。「え・・・? あ、あれって昔使われていたとか言う指令基地ってやつですよね? 小さなあれが、新Iwaki基地なの⁈ しょ、しょぼっ・・・」落胆の色を隠そうとしない幼い少女ミクロマン

「新人! おめー、バカ、このッ! 中古物件だが、あれがあるだけでも今のIwaki支部にとっちゃスゲェことなんだよぅ!」マイケルが声を荒げ、下唇を突き出す。

アイザックが左腕のコンピューターを操作しながら間に割って入った。「大丈夫。吾輩がそのうち、すごい秘密基地を建造してあげるのである! それまでは中古物件・指令基地と、今回搬送してきた吾輩の新発明・アルティメット整備工場システムで乗り切るのだ!」

発明家が全員にあれを見ろと、部屋の中央に置いていた、群青色のプラスチック製品ぽい質感をした、少し大きめの折りたたみ式収納BOX(100円ショップで見かけるような物)を指し示す。

彼のコンピューター操作の信号を感知したBOX達はフワリと空に浮かび上がると、パタパタと音を立てながら展開、それぞれ箱になると空中で見事に合体、巨大な建築物となって、そっと床に降りてきたのであった。見た目、簡素なプレハブっぽい雰囲気を醸し出した整備工場に見える。

「スッゲ、スッゲ! カッコい~!」興奮した辰巳が真っ先に工場に飛び込んでいく。

「辰巳くん、辰巳くん、待ってくださいよ~」それを追いかけるように、サーボマンのウェンディとアシモフが、幼児の面倒を見なくてはと追いかけた。

「プレハブですか・・・これまたショボい・・・」肩を落とすアリスの背中をマイケルが軽く叩く。「プレハブ学校、結構、結構、コケコッコー! 冬は寒くて、夏暑い! 楽しい思い出作りがいっぱいだー!」そしてメイスンと共にとっとと中に見学しに行ってしまったのであった。

「そういう思い出はいらんとですよ・・・」しょげた顔つきでトボトボ歩き出すアリス。

綾音がマックスを見上げた。「みんな行っちゃったよ! あたし達も行きましょう、隊長さん!」綾音に手を引かれ、マックスは「ああ、そうだな!」と言い、ふたりで仲間たちの元へと向かったのであった。

 

新しい仲間たちに囲まれ、マックスは心の中に、とても暖かいものが満ちて来るのを感じていた。

 

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ミクロマン・マックスと、ミクロ化した少女・綾音

――こうして、いわきの地に“ミクロマン・新Iwaki支部”が始動したのである。時に2021年2月、旧Iwaki支部が壊滅して約10年後のことであった。

邪悪なるアクロイヤーが探し求める子供とは、いったい何なのだろう。やつらは、その子供を探し出したら、どのような悪事を行おうと画策しているのだろうか・・・?

あの青い色をした戦闘型ロボットの正体も、不明のままだ。何者で、何を考えているのか。それに、ロボットが言い残した“アリア”とは何を指しているのだろうか・・・?

謎は尽きない。しかし、ミクロマン達は綾音や辰巳と共に、ミクロの世界から、いわきの平和をこれからもきっと守っていくことであろう。

行け、ミクロマン! 戦え、ミクロの戦士たち!

 

〔第1部・復活のミクロマン、完〕

 

 

※いつも読んでいただき、ありがとうございます。

今回で、ひとまずの一区切り。

皆さんからのご感想、お待ちしていますね。