ミクロマン -G線上のアリア-

これはミクロマンの、長い長い物語の、あまたある物語のうちの、ほんのひとつにしか過ぎない。

第5話・新Iwaki支部、始動!<part.1>

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『お姉ちゃん、ついに明日が、いわきに向かう日です。10年前の411のあの日、仙台支部からたった一人勇敢に助けに向かったお姉ちゃんが、最後に守ろうとした地、いわき。そこに再びアクロイヤーの魔の手が伸びているそうなんです。小さな子供たちがね、狙われているんだ。

壊滅したままだったIwaki支部だけど、当時の隊員の一部が集まり、いわきで事件が起き始めている事実を調べ出して報告、再始動させたいことを富士山麓本部に要請したの。会議で承認され、再開が決まりました。でも、どこの支部アクロイヤー対策に追われてて、急な再編成は現時点では難しいということで、まずは私みたいな新米のメンバーに声がかかったの。「これは最大のチャンスだ!!」と私、自分から配属希望を名乗り出たんだよ。

尊敬するお姉ちゃんの代わりにはならないかもしれないけど、お姉ちゃんが最後に守ろうとした基地や、その土地、そしていま狙われている子供たちを、今度は私が守りたいって思ったの。お姉ちゃんの代わりに私が守る! がんばるからね!

・・・と言いつつ、明日はあちらの皆さんが総出で迎えに来てくれるそうで、実は今からすっごい緊張気味でいたりします(;^_^A』

 

新米女性ミクロマンが着用するピンク色の簡易ミクロスーツ姿の少女ミクロマン・アリスは、自分が愛用するモバイルブラスター(破壊光線銃にも変化する、携帯万能コンピュータ)のキーボードを叩くのをそっと終えた。

彼女の姉はドロシアと言い、ミクロマン仙台支部のレスキュー隊員で、ロボットマン2乗りであった。2011年3月、東日本大震災のあと、応援や救援要請を出していたIwaki支部を、所属する基地の命令(仙台も地震で甚大な被害を受けており、他には手が回せなかったのだ)で助けに行けなかったことを悔いていたドロシアは、4月11日に起きた余震の際、再びアクロイヤーの奇襲攻撃を予感、たった一人いわき支部に応援に駆け付けたのだ。Iwaki基地に一人残っていたエンジニア・マリオンと協力、必死にアクロイヤーの攻撃に抵抗を続けたものの、最後は大爆発に巻き込まれ、帰らぬ人となったのである。

愛する姉ドロシアの影響を受け、アリスはレスキュー隊員養成学校に入り、先日、卒業したばかりであった。新米の彼女は配属先もまだ決まらずにおり、富士山麓本部で雑用を任せられる日々を送っていた。そんなところに、姉の死を通して気にかかるようになっていたIwaki支部再開の知らせと、隊員派遣の話である。即、飛びついたことは言うまでもない。

アリスには、姉と生前、頻繁にやり取りしていた個人メールアドレスがある。彼女はそのメアド宛てに、日々の出来事や想いを綴った文章、“お姉ちゃんへの日記”と自分で名付けたものを、今なお送ることを心の糧としていた。常にアリスのことを気にかけてくれていた、頼りになる大好きな姉からもう一切返事が来ないことを承知しつつの行為である・・・。

いま打ち終えた、今回の“お姉ちゃんへの日記”に記したように、アリスは自分を活かす為の目的がハッキリと見え、どこで生きていくか決心したことを、姉に伝えたかった。送信キーを押す。画面に、嘴に手紙を咥えた鳥のマークが現れ、空へと羽ばたいていくアニメーションが流れた。まるで鳥の行き先を追いかけるように、部屋の窓の外に見える現実の青空に目をやる少女。その瞳は、しっかりとした揺るぎない決意の色に彩られていたのである。

 

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――「マックス、本部からデータ通信が入った。明日、こちらに到着する予定の、第一陣メンバーのリストだ」赤スーツのメイスンが、指令基地の大型メインスクリーンを見るようマックスに促した。

 

いわき市にいる3人のミクロマンが、富士山麓本部に連絡を取ったのは6日ほど前のことになる。通信先である本部・指令室にいた面々や上層部ミクロマン達と3人は、古くからの知り合いであった。お互いに友情は変わっていない。しかし、もう10年も経つことから、なかばマックスの捜索に諦めを感じていた本部メンバーである。それが突然、画面に顔をぬっと出し、「久しぶりだ。相談がある。Iwaki支部を再開させて欲しい」と、挨拶もそこそこに要望を口にマックスが登場。指令室の面々が色んな意味で腰を抜かさんほどの驚きを見せたのは当然と言えよう。

大切な友人であるマックスが生きていたことに目頭を熱くさせながら、本部の面々はマックスたちの話に聞き入った。「“いわき調査・監視班”から詳細な報告は受けている。上層部会議にもかけ、君らが希望しているのと同じように、再開を再び考える時が来たようだと結論を出したところだ」「話が早い! 助かる!」「・・・ただ、明日にもすぐに、という訳にはいかない事情もある。いわきにおけるアクロイヤーや、謎の青い戦闘型ロボットの動向の問題もあるが、何より今、本部含め各支部は、日々起こるアクロイヤーの悪事の対処に追われており、新しい基地の建設、マシンの再配備、メンツの再編再配属と言う流れを即座には取れない状況にあるんだ」

マックスが険しい表情になる。「事情は分かる。だが、そうこうしているうちに、子供達への被害は広がるばかりになるぞ?」

 

ずっと様子を見ていた綾音が、無理やり指令基地のスクリーンを大きな目で覗き込んだ。「ハイ! ちょっと話に参加させてください! マックスたちの話にも出た、磐城綾音と言う者です!」マックスたちの話から綾音の存在は既に分かっていたが、急に巨大なふたつの目玉が覗き込んできたことに、本部の面々は再び腰を抜かさんほどに驚いた。

「あたしのことも、ミクロマンの仲間に入れてほしいの!」綾音の言葉に、指令基地の3人が「なんだってー⁈」と振り返る。「いわきの平和維持活動を進めていくのに人手が足りないんでしょう? 本部も、急には他の仲間をよこせないんでしょう? だったら、あたしが手伝うよ!」「気持ちはありがたいが、しかし・・・」マックスの言葉を遮る綾音。「わかってるって! 子供を危険なことに巻き込みたくないって言いたいんでしょう⁈ でも、それを承知で頼みたいの。だって、いま事件に巻き込まれているのは私の知り合いだったり、もしかしたら友達だったりするかもしれない子供達なんでしょう? 仮に友達でないとしても、同じいわき市に住む子供だよね? 同じ立場にある子供のあたしが、事件が起きていることを知ってて、何もしないでひとり平和な顔をしてのほほんと生きてるなんて嫌だよ!」「・・・!!」「それに、人間の為に身を削ってミクロマン達が一生懸命に戦っているのに、人間のあたしが守られているだけで何もしないでいるのはおかしいと思うし、そんなの嫌だ!! 自分で自分が納得できないよ!!」

小学生とは思えない説得力のある熱い綾音の言葉に、3人のミクロマンと本部の面々は否定すべき言葉を失った。

綾音が傍にあったピンクのスマホを手にする。「あたしがどういうことで役立てられるかは今わかんないけど、思い付いたことならひとつあるよ。あたし、いわきの色んな所に、LINE友がいるんだ。そのLINE友の中には、すんごい数のLINE友がいる子もいる。子供の身の回りで何が起きているか知りたいなら、子供に直接聞くのが手っ取り早いんじゃない? 私がLINEでつながってる子らの間に入って聞いて回り、調べることが出来る。マックス達が飛行機に乗って情報をあちこち探すより、ずっと早いと思うんだけど」

「ほうほう、なるほどな。そりゃ良い案だと俺さまも思うぜ~」青スーツのマイケルがひょうひょうとした口調で手を上げる。

「同感だ」と、無表情にメイスン。

綾音と一番最初にコンタクトし、友人となった肝心のマックスは? と、皆が一斉に視線を向けると、「分かった、分かった・・・綾音がメンバーに入ることに、僕も異論はないよ」と、彼はお手上げと言うように両手をバンザイにしたのだった。感情が高まり、いつの間にか大粒の涙をボロボロと綾音は流していたのだが、その涙が次々とマックスの上に落ち、彼は半ばびしょぬれになっていたのだ。「君の真剣な気持ちは十分わかった。熱心さに負けたよ。それに、これ以上、僕もぬれたくないからねぇ~・・・」

「ありがとう、皆! あと、基地を作るなら私の家にしなよ! 水石山の基地はボロボロだし、アクロイヤーにも知られちゃってるんでしょう? あたしの部屋とか天井裏とかどうよ。まさか、ここにあるなんて、誰も気が付かないと思うよ⁈」

「ほうほう、なるほどな。それも良い案だと俺さまも思うぜ~」青スーツのマイケルが、先ほどと同じくひょうひょうとした口調で手を上げる。

「異論はない」と、同じくまた無表情にメイスン。

黙って聞いていた本部指令室の面々が画面の向こうで顔を合わせ、二言三言、言葉を交わした。「・・・うむ、綾音くんのことも含めて色々と了解した。だが、さすがにすべてを一気に立ち上げるのは難しい。だから、まず第一弾の段取りとして、先行してそちらに行かせられる人員を――少数ではあるが――早急にこちらでどうにかする。新Iwaki支部を早速立ち上げ、事件の調査・解決に動き出すにも、三人では心許ないだろう。ひとまずはもう少しメンバーが必要だ。一週間ほど時間をくれないか?」

指令基地の12Xチームの面々と、綾音は笑顔でうなずき合い、メインスクリーン越しに敬礼したものだ。

 

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そして、その日から6日後の今日。ミクロマン富士山麓本部から、派遣される面々について報せる入電があったわけである。指令基地の大型メインスクリーンに、やってくる面々の顔写真と簡単なデータが次々と表示されていった。

 

アイザック(男性クローン・ミクロマン)――旧Iwaki支部に所属していた故マリオンと同タイプのエジソン・クローン。メカの開発や発明に従事してきた経験を持つ。ラボ、ファクトリー担当可能。

・アリス(女性ミクロマン)――レスキュー隊員養成学校を卒業して間もない若手女性ミクロマン。経験は浅いが、自らIwaki支部配属を志願してきた。彼女の姉は411の際、ロボットマン2で旧Iwaki支部を救援に向かい戦死したレスキュー隊員ドロシアである。姉の志しを受け継ぎ、平和維持活動に従事したいと強く申し出ており、決意は固い。インテリジェンス、メディカル担当可能。

アシモフ(男性型サーボマン)――様々な知識をインプットされた小型で小回りが利くロボット。インテリジェンス、メディカル、ラボ、ファクトリーと言った基地の各部門すべてをアシスト可能。

・ウェンディ(女性型サーボマン)――ミクロマン・人間世界問わず、地球上におけるメカやマシンのあらゆる設計図やデータがインプットされているロボット。カー形態に変化も可能で、専用のミクロ高所作業車を牽引合体もできる。メカニックマンとしても超一流の技術能力を与えられている。ファクトリー担当可能。

 

ミクロマンが二名配属、サーボマン二体が配備、上出来じゃないか!」マックスに、他の二人が親指を立てて見せる。

「当面これでがんばれや、と本部は言いたいんだろうな」マイケルの推測に、「間違いない」と無表情にメイスンが返答した。

「その他連絡事項によると、ダンナの指示通り、お仲間さん達は明日の16時頃、三崎公園下の小さな砂浜――マックスがカプセルで眠りについていた例の砂浜――に、海中ルートでやってくることになったようだぜ。・・・で、だ。マックスのダンナよ、やはり敵さんたちは現れると思うかね?」懸念するマイケルに、マックスは綾音の部屋のカレンダーに書かれてある明日の日付を睨め付けたのだった。

「来る・・・と思う。我々がやつらを調べているように、やつらだって我々を調べているはずだ。富士山麓本部からミクロマンがいわきに向かうというこの情報だって、どこでキャッチされているかわかったもんじゃない」「・・・だろうな」「だから、今のうちに作戦を立てておこう」三人は、指令基地の大型メインスクリーンに、三崎公園の地図を表示させたのであった。

 

――いわき市のどこかにある、人間にも、ミクロマンにも知られていない、謎の暗黒アクロイヤー空間。その中心部、仄かにぼんやりとだけ輪郭が金色に光る球形をした狂気の部屋の七色の彩色がフッと落ち着き、ぼんやりとした金一色の世界となった。黒、緑、銅色の点が滲み出すように現れ、黒色だけが膨れ上がりアクロイヤーの姿となる。

重くのしかかる様な中年女性の声で、黒いデモンブラックが他の二人に報告したのだった。「スパイロイヤーから緊急連絡が入ったよ。明日の夕方、ミクロマン富士山麓本部から数名のミクロマンとメカが、いわきにやってくる情報をキャッチしたと言うことだ。三崎公園下の砂浜が、合流場所らしいと言うこと以外、詳細は何もわからない。・・・が、今までにない動きじゃないか。我々の計画に気が付き始めたやつらが、いわき市で本格的に平和維持活動を再開させる準備を始めようとしている可能性は否定できないねぇ」

「厄介なことになる前に、手を打たねばならん」と、老女声の銅色。

「勿論、早めの対処が良いに決まっているさ。まとめて私がそいつらを血祭りにあげて見せよう!」デモンブラックは、まるで面白いゲームの参加権を手に入れたように、はしゃいだ声になる。

「よろしく頼む」とは、理知的な若い女性の声をした緑色だ。

重くのしかかる様な中年女性の声、しわがれた老女の声、理知的な若い女性の声が、同時に口にした。「我らがアクロイヤーの繁栄と未来の為に・・・!」と。

 

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三崎公園

 

――いわき市の南東、海に面した場所に、総面積700,000㎡ほどの広さを持つ小高い丘がある。そこは、中央のマリンタワー(塔屋59.99mの展望塔)を筆頭に、巨大芝生広場、アスレチック遊具広場、遊歩道、バーベキュー場、野外音楽堂、ホテルと言った、人々に遊びと憩いを提供する場や施設が設けられている巨大自然公園で、その名を三崎公園と言った。

太平洋といわきの街並みを一望できるこのシーサイドパークは観光名所でもあり、休日ともなると、親子連れや他県ナンバーの観光バスが出入りする姿が多く見られる。しかし、今日のように平日だと、散歩や運動に訪れた近所の人達の姿がちらほらとまばらに窺える程度で、ほぼひと気はなかった。夕方前近くとなれば尚更である。

その三崎公園からせり出し、海に向かって突き出た崖っぷちに、潮見台と言う小型の展望台があった。大砲の砲身のように海に延ばした通路上の展望ポイントがあるその潮見台は、周囲が森や防風林に覆われており、遥か眼下には幅50m弱程の狭い砂浜が広がっているのが見える。

東側は潮見台がある高い絶壁、西側には何もない高い絶壁、波打ち際はゴツゴツとした岩場があるだけの、これと言って特徴もない砂浜だ。潮見台わきの階段、もしくはアスレチック遊具広場から坂道を下ってくるとここに出るのだが、一月の初め、綾音と辰巳がマックスとミクロ・ワイルドザウルスを発見したのが、この砂浜であった。

 

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誰もいない砂浜の中央に、ポツンとラジコンカー大のベージュ色をした4WD車が見える。ミクロ・ワイルドザウルスだ。ボディに腰かけて海を眺めているミクロマンもいた。イエローとホワイトのツートンカラーのミクロスーツを身にまとうマックスである。

平日ということもあって、綾音と辰巳は学校や保育園に行っており、ここに姿はない。

彼は本部との約束通り、7日目の今日、16時前に、待ち合わせに指定したこの砂浜に来ていたのだった。

ミクロマンの姿を人に見られてはまずいことは言うまでもない。勿論、他にもひと気のない場所はいくらでもあったが、わざと“ひと気がなさすぎないギリギリの線”で、ミクロマン達は新しい仲間と落ち合うのに敢えてここを選んだのであった。あまりにもひと気がない場所だと、逆にアクロイヤーが目立たないのをいいことに、戦力を増大しやってきてしまう可能性が予測されたのである。だが、人がやってくるかもしれない可能性を含んでいるこのような場所であれば、大軍団で押し寄せることなどはしないはず。ここ何年も隠密行動をとっているぐらいだ、彼らもバカではないだろう。

仮にアクロイヤーが現れたとしても、場の状況的におおよその数が予測できうるところ、周囲の建物や人間に被害が及ばないところ、自分たちも勝手をよく知るところと勘案した結果、マックス達はここを選んだわけであった。

 

彼はミクロ・ワイルドザウルスの操縦席ディスプレイを確認した。時間はそろそろ16時になる。新しい仲間達が到着する時刻だ。

待ち続けていたこの一週間の間に、マイケルとメイスンが仙台支部に一旦戻り、いくつかのマシン用部品を持ち帰ってくれていた(メイスン曰く、「きちんと手続きは取った。だが受理されるまでの時間がもったいないと、マイケルが備品庫から勝手に持ち出した物だ」)。そのお陰で、この戦闘車両と指令基地の通信機やレーダーは最新モデルに入れ替わっており、何があっても以前のように困ることはなくなっていたものだ。操縦席を取り巻く薄汚れているパネルのうち、該当する一部が交換された新品機器の輝きを放っている。

キレイな新型モデル通信機に、ついに通信が入った。少し幼い感じがする女性の声で、到着したことと迎えに来ているかの確認を取ってくる通信である。

「こちらマックスだ。周囲確認、異常なし。浮上されたし」返答すると、砂浜から少し離れた波間に、2リットルサイズの黒いコーラのペットボトルが静かに浮かび上がってきたのだった。押し寄せる波の動きに合わせてペットボトルは砂浜に近付き、ついには陸に乗り上げる。ビックリ箱のふたが開くように、横倒しのペットボトルが、パカッと横一文字にわかれて開いた。中に液体はない。内側の壁面にみっしり詰まった機械と配線類が見える。ミクロマンの“シークレット・ミクロサブマリン”、コーラのペットボトルに偽装した潜水艦であった。

中央部分に大きな空洞があり、そこに一台の車両が見える。先のデータ情報によれば、牽引車に変化した女性型サーボマンとそれに牽引された高所作業車で、運転席と作業車の上には合計3つの人影がある。

 

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車両が浜辺に進みだしてきて、マックスの傍まで来て停止する。新米女性ミクロマンが着用するピンク色の簡易ミクロスーツを着た少女、グリーンをベースにしたレッドパワーズスーツを身にまとった男、ガラスケースの頭部からメカ頭脳が透けて見えている小型サーボマンが次々と砂浜に降り立つ。全員が降りたタイミングに合わせ、牽引車が一瞬にして変化、ボディがずんぐりむっくりした、その割につぶらな目をした人型サーボマンとなった。

おかっぱ頭の、ピンク色の少女が緊張した面持ちで敬礼してきた。「アリス隊員、アイザック隊員のミクロマン二名。アシモフ、ウェンディのサーボマン二体、無事にいわきに到着いたしました!」マックスも敬礼する。「よく来てくれた、歓迎するよ。僕はマックスだ」「本部から話は伺っておりますッ!」新米ミクロマンのアリスが、緊張のあまりだろう、血の気が失せ、顔色がどんどん白茶けてきている。マックスは両手を軽く振って見せた。「軍隊ではないし、そこまで固くならなくても大丈夫だよ」アリスが胸を押さえる。「あ、ありがとうございます。もう、心臓が爆発するんじゃないかってくらい、緊張しちゃって~・・・」

マックスは新人に少し苦笑いしながら、その隣にいる男アイザックに視線を移した。何人もいるクローンとは知っているが、かつてIwaki支部で苦楽を共にした友人であるマリオンと本当に瓜二つだ。懐かしい思いが込み上げてくる。

 

「わざわざ遠くからやってきた仲間と、これから何をして遊ぶんだい? 私のこともまぜておくれよ」重くのしかかる様な中年女性の声が、急にどこからか聞こえてきた。全然知らない声である。しかし、その殺気と言ったらどうだろう、全身の毛が逆立つほどの物であった。

戦士の危険感知能力が後方に気配を察知。マックスが振り返ると、砂浜の隅の方にある、流れ着いたらしい流木の上に真っ黒い奇形なる悪魔のような姿をした何者かがいるのを発見したのだった。その場にいたミクロマン達は瞬時にそれが、世界各地で確認されている“デモンタイプ”と呼称されているアクロイヤーであることに気が付く。

「フフ、フフフフフッ・・・」黒いデモンタイプ――いわき侵略軍幹部の一人デモンブラックが気味の悪い声で笑い始めると、それに合わせてミクロマン達の周囲の砂浜の下、地中から次々と砂を押し払い、アクロ兵やアクロメカロボが這い出してきたのだった。

10、20、30、40、50・・・全部で何体いるのだろうか? マックスたちは完全に取り囲まれてしまったのである。

 

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〔第5話・新Iwaki支部、始動!<part.2>に、つづく〕