ミクロマン -G線上のアリア-

これはミクロマンの、長い長い物語の、あまたある物語のうちの、ほんのひとつにしか過ぎない。

第4話・新たなる使命<後編>

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その時、偶然が重なった。午後の最初の授業である5時間目のことだ。各学年、授業を担当している教師たちは子供たちのもとへ、空き時間に該当していた残りの教師数人も、来客があり来賓室へ向かったり、校庭側の倉庫に用事ができて外へ出たりして、すべて出払ってしまったのである。こうして職員室には誰一人としていなくなってしまったのだった。

電話番をお願いされた校長は、電話機が目の前にあることからも、隣の校長室でスマホ視聴による国会中継に夢中になっており、職員室の方には全然意識を払っていない。

綾音の通う小学校の大人たちは今、このような状況にあったこともあり、「これはまさしく好機だ」と、様子を窺っていた不審者は職員室に不法侵入したのであった。

 

不法侵入者は、普通であったら目にすることなどないだろう奇妙奇天烈で恐ろし気な姿かたちをしていた。なんとそれは四肢の短い手足のある人の頭蓋骨を模したグレー色のロボットであったのだ。いや、例え誰かがいたとしても、20㎝弱ほどの大きさだったので、入ってきた気配すら感じ取れなかったかも知れない。

ロボットはまさしく綾音が山の神社で遭遇した、アクロイヤーの操るアクロメカロボと同型の物であった。

 

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不細工な頭蓋骨は短い手足をちょこまかと器用に動かし教師たちの机をよじ登り、山積みにされたテストの答案用紙や資料を飛び越えては、あちこちの机の上を移動する。どうやら目をつけていたらしい一番後ろの机の上、電源が入れっぱなしのノートパソコンの前にたどり着くとピタリと立ち止まった。

顎が開くと、まるで蛇の舌のようにシュルシュルと1本のUSBコードが伸び、PCのポートに接続される。すると、双眸が怪しくオレンジ色にチカチカと瞬き、すごい勢いでノートパソコンの画面にいくつものウィンドウが開き出した。次々にデータにアクセスがなされているのだが、どうも目的はこの小学校に通う子供たちの情報にあるようだ。

 

「子供の個人情報パクってんなよ!! 犯罪だぜ⁈」いきなり天井の方から鋭い声がして、同じ場所から短い閃光がひとつ放たれた。ビームである。ビーム光が頭蓋骨とPCを繋ぐコードにみごと命中、焼き切れてブチリと千切れた。

頭蓋骨ロボが驚いて上方を見上げるのと、声がした方から連続で発射されたビーム・マシンガンの光線が次々とグレーのボディに命中、ハチの巣にしたのがほぼ同時であった。頭蓋骨ロボがいくつも空いた穴から微かに煙を上げ、力なく机の上からダイブ、床に落ちてバウンドした後、横になったまま動かなくなる。

 

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死んだのかと思いきや、頭頂部のハッチが開き、中からミクロマンとほぼ同じサイズをした、人型ロボの骨格標本とでも言うべき姿かたちをしたアンドロイド兵らしきものが這い出してきた。アクロイヤーのしもべ、アクロ兵である。

頭蓋骨ロボを操縦していたアクロ兵は腰の戦斧を慌てて手に持つと、攻撃を仕掛けてきた何者かを探して辺りをキョロキョロとしたのだった。

「鬼さん、こちら!」真後ろから声がして振り返ると、そこには青と白のツートンカラーのミクロスーツを身にまとったミクロマンがいた。声の主であるその人物は、今朝、綾音についてきたミクロマン・マイケルその人である。

マイケルは素早くアクロ兵の間合いに入り込むと、手刀で戦斧を落とした。すかさず正拳突きを繰り出す。アクロ兵が後ろによろけたのを見て、マイケルは次に飛び蹴りを食らわせたのだった。すっ飛んで行き、大きく体制を崩して尻もちをつく骨格標本アンドロイド。

「アクロ兵のお前らに話が通じないのは分かっているが、俺さまは優しいんで、倒す前に訊くだけはしてやる。降伏しろ! ・・・あと、“真の目的”はなんだ⁈」

アクロ兵は「ギギ・ガゴゴ・ギギギ・・・」と訳の分からない機械的な唸り声を発し立ち上がる。そしてマイケルを睨みつけ、尚、飛びかかろうとしてきたのだった。

「やれやれ、ご苦労さんなこったぜ」マイケルは身構えるのをやめて、両手を軽く左右に開き首をすくめて見せた。急に油断した姿を見せるとはバカにしているのかとアクロ兵は両目を怒り狂った攻撃色の赤色に輝かせて突っ込む。

 

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次の瞬間、いつの間にかアクロ兵の後方、少し離れた場所に舞い降りてきていたニュー・ビームトリプラーが、ビーム砲から2連射のビームを発射。アクロ兵共通の急所である電子頭脳とエンジン心臓部を背中側から瞬時に焼いた。何が起きたか分からないままアクロ兵は動きを止め、目や口、全身の関節から微かに火花を散らし、前のめりに倒れると二度と動かなくなったのである。

ニュー・ビームトリプラーが床を進み、ゆっくりとマイケルに近づいてくる。「いつもありがとさん、トリちゃん」このマシーンの中央ボディには自律型・超AIが搭載された量産型・流星ロボがそっくり流用されている。その為、持ち主の意思を読み取り、今のように絶妙にサポートしてくれるのであった。

天井付近からアクロメカロボに忠告、攻撃した時はマイケルが搭乗、そのすぐ後にふた手に別れての段取りであった。繋がるコードやアクロメカロボを仕留めたのは、ニュー・ビームトリプラーをその時に操縦していたマイケルの腕だったが、今の急所への連続命中は人技ではできないような超絶高等テクニックである。自律型・超AI搭載マシーンだからこそなせる技であった。

マイケルはマシーンにつかまると、机の上まで上昇させた。先ほどアクロ兵が調べていた教師のノートパソコンの画面を確認する。「やはり、またこの手の子供たちのデータを調べていたのか・・・」青いミクロマンは左手であごをさすりながら、眉をしかめて見せたのだった。

 

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――夕方より少し前、綾音とマイケルが磐城家に帰宅すると、目を覚ましていたマックスとメイスンが指令基地の修理を行っていた。パワーを取り戻した彼らは1時間ほど前にカプセルから出てきたそうだ。その時、昨夜の続きをする上で、データ等を参照しながら話を進めた方が良いと言うメイスンの提案から、コンピュータ周りの修理を行っていたそうである。彼らが施していた修理はあと少しと言うところで、時待たずして完了したのだった。

早速3人のミクロマンは指令基地内に集合する。綾音はと言えば、指令基地の置かれた自分の机につき、見下ろす形で彼らの話に(勝手に!)参加させてもらうことにしたのだった。

 

マイケルが、昨夜疲れてしまったメイスンに対して申し訳なさそうな顔をしながら挙手する。「今日は俺が話を進行させてもらうぜ。メイスン、フォローよろしく」

「異論はない」メイスンがぶっきらぼうに返答した。そして赤スーツの彼はマイケルの話の進行に役立てる為、自分のミクロマシンから持ってきたハンディタイプ・コンピュータを指令基地のメインコンピュータ・ポートに繋いだのであった。マックスに提示するための新しい様々なデータを、これで指令基地の画面に映し出すことができる。

マイケルの指示で、指令基地の大型メインスクリーンに日本の地図が表示された。いくつかの土地に青く光る点が現れる。次に、赤い小さな点がポチポチと、青よりも多くあちこちに点灯したのだった。昨日の話から推測するに、青い点がミクロマンの大型の基地があるところ、赤い点が地方にある小型の支部なのだろうと綾音は推測する。

少女の想像は当たっており、マイケルがいわき市の上に光る赤い点のひとつを指さした。「311と411の自然災害ならびにアクロイヤーの奇襲攻撃における被害は甚大で、我々ミクロマンに多大なる影響が出たのはご存じの通り。死傷者や行方不明者は多数。ほぼ使用不可に追い込まれた支部もあり、後にいくつかは完全に閉鎖を余儀なくされた。それにIwaki支部も含まれている・・・。

該当する閉鎖された小支部の生き残った者の行先や、その土地の以後の平和維持活動は、閉鎖されることになった各支部の近隣にある大型支部に任せられることになった。吸収合併ってやつさね」

メイスンが手元のコンピュータの画面をトントンとタップすると、大型メインスクリーン上の赤い点がいくつか消えていく。それらに交じって、Iwaki支部の赤い光もじんわりと消滅したのであった。

「要するに、Iwaki支部はつぶれちゃったわけ?」言いにくそうに綾音が質問した。

マイケルはため息をつく。「君が目にしたように、まさしく見た目通りに“潰れた”のさ。今、いわき方面の管轄は、仙台の大型支部になっている・・・」

 

「我々のいわき市はとんでもないアクロイヤー被害を受けたんだぞ? あの後は大丈夫だったのか? いわきに滞在するミクロマンの平和維持活動が無くなっても・・・?」マックスが硬い表情でマイケルを見た。

「それが、だ。ここからが本題になる」マイケルが腕組みをする。「実は411の後、しばらくして奇妙なことになり始めたんだ」

メイスンが話の流れに合わせ、新しいデータを画面に表示させた。それは10年前から現在に至るまでの、日本各地におけるアクロイヤー被害の一覧であった。先ほどから表示されている日本地図に重ねるようにして各地に小ウィンドウが開き、いつ何が起きたのかが小窓ごとに次々と上方スクロールされる形で表示されていく。だが、どうしてか、いわき市だけほぼ動きがない。情報が出てきたとしても、アクロイヤーの目撃談レベルで、事件らしい事件が発生していなかったのであった。

「見ての通り、だ。アクロイヤーは何故かいわきで事件を起こさなくなった。だが、この地から去った訳ではない。確実に市内を蠢いていることだけは確認されている。動きが沈静化した以降、現在に至るまで、ずっと、だ。やつら謎の隠密行動をとり続けているんだ。不気味なほどに、徹底して、な」マイケルが一旦話を切る。

メイスンがすかさず、話の流れを取った。「しかし、それも数か月前から、少し状況が変わってきている」「と、言うと?」マックスの問いにメイスンは続けた。「去年の夏あたりから、おかしな出来事が、徐々に起こり始めたんだ」

綾音が「アッ!」と声を上げる。「“神隠しがやってくる”のことかな⁈」

マイケルが綾音にウィンクして見せた。「ご名答!!」

青と赤のミクロスーツのミクロマン達は、マックスと綾音に細かく説明してきた。去年、2020年の夏頃から、いわき市の子供が、ほんの数時間だけ行方不明になるという出来事が徐々に起こりだしたことを。話の内容は、綾音が噂話で聞いてきたものと、まったく同じであった。姿を消していた間の記憶は本人に一切ない。ケガを含め、誰かに何かされた形跡もない。学校帰りとか、塾の帰りとか、ひとりで遊びに出かけた先でとか、通常の日中生活行動サイクル内から飛び出さない時間帯中の短い間と言うこともあり、心配した親が捜索願いを出したようなケースは皆無。気のせいだ、ボーッとしていたのだ、ストレスから一時的な記憶障害的なものを起こしただけだ、と、周囲には済まされてしまう。被害者は、そのパターンで占められていたのだった。

「奈月ちゃんのことや、あたしが巻き込まれたことも含めて、噂話はすべてアクロイヤーが起こしてる事件というのが真相なんだね⁈」昨日の出来事の後、綾音は関わった出来事をミクロマン達にすべて説明していた。マイケルとメイスンはその通りだと、深く頷いてきたのであった。「調査中、子供たちの間で噂話が広まっていることを知ってね。実際に神隠し事件の調査に乗り出したのがふた月ほど前、真相を知ったのはひと月ほど前のことになる・・・」

 

「マックス、これを見てくれ」メイスンは更なるウィンドウを開き、彼らが調べ、突き止められた範囲内の情報――被害を受けた子供達のリストと、神隠しに偽装して何が行われているのか現段階までに判明している情報――を表示させた。

「なに⁈ なに⁈ 小さすぎる上に、どこの文字かわからないから読めないんだけどー⁈」俄然、強い興味がわいてきた綾音が必死に抗議する。小ささは別としても、文字はミクロマン達の文字であり、確かに綾音には判読不可能であった。

「ちょっと待ってくれ」マックスが、画面に表示された被害者たる子供の一覧をじっと見つめる。そして彼はすぐにあることに気が付いたのであった。

「綾音、これはそのアクロイヤー神隠しにあった子供たちのリストだよ。僕の勘違いでなければ、どうも共通項があるようだ」「共通していることがあるの?」「うん・・・2011年の3月から4月の頭ぐらいにかけて、いわき市で生まれた者が、主にターゲットにされている・・・という風に見える」「は? は? その辺が誕生日の子供が狙われているの⁈ マジヤバイじゃん!! うち、誕生日、2011年4月7日なんだけど⁈」

「偶然、綾音も誕生日がその範疇に該当してるようだな。今日、学校のパソコンのデータを目にして、俺も知ったよ」マイケルは他の二人に目をやる。「今日、綾音の学校にアクロ兵が忍び込んでな、学校のパソコンから、やはり誕生日がその辺に該当する子供のデータを盗み出そうとしていたんだ。勿論、阻止してやったがな!」

メイスンが「やはりな」という表情になる。「パトロールしている中で、綾音の学校にアクロイヤーが目をつけていることを知った。先日バンパイザーがうろついていたんだ。やつらは今、君の学校に通う、該当する子供達を調べ始めているようだ・・・」

アクロイヤーは、子供たちに一体何をしているの――?」綾音は自分が昨日の夕暮れに体験したことを思い出し、ゾッとしながら尋ねた。

マイケルは、綾音が読めない大型画面に映し出されている報告データに手をかざした。「催眠術にかけてひと気のないところに連れて行き、“何か”を調べている。どうも彼らにとって必要なその“何か”がある子供を見つけ出そうとしているようなんだ」

メイスンが話を接いだ。「だが、その“何か”が、今のところ我々には分からない。確かなのは、騒ぎを起こして仕事がしにくくなることを避けたいらしく、用がない子供には指一本触れず、速やかに帰して目を覚まさせるってことだ。勿論、その間の記憶は一切消して、だ」

「俺らや他の仲間たちでやってる“いわき調査・監視班”が、長年かけて調べ上げた情報と、去年からのやつらの動向を合わせて導き出した、ひとまずの答えがある。

やつらは2011年4月以降、何か事情が出来て、いわきへのあからさまな侵略行為を行うことを控え始めた。それが何故なのかは不明。断言はできないが、子供を探し始めたこととその事情はどうもリンクしている気配がしている。

また、自分たちの目的とする子供が、ある程度おおきくなるのをおとなしく待っていた節がある。おそらくなんだが、赤ん坊や幼稚園、小学校低学年ぐらいじゃ、少しでも見当たらなくなったら即、周囲の大人が大騒ぎになって、以後、自分らの仕事に支障をきたすことになると判断したんだろう。だから、ほんの少しの間、姿が見えなくなっても問題視されないくらいの年齢・・・小学校中学年ぐらいになるのを待っていたのではないか、と。

あとひとつハッキリしていることがあって、探している当のご本人さん達も、どの子供が自分達の目的に該当するのか見当がついていないらしい、ってことが挙げられる。いわき生まれで、誕生日が2011年の3月から4月くらいまでの子供の誰か、というのだけを目安にして、行き当たりばったりに、あちこちの子供を連れ去っているとしか思えない風に見えるんだ。勿論、同じ地区の子供ばかり連続でさらったら怪しまれることを想定して、わざとあちこちランダムにしているんだとも思うけどな」

 

「“いわき調査・監視班”? 今、君たちはそこに所属しているのか?」マックスは初めて聞く部署名である。

マイケルが重いため息をついた。「そうだ。311の戦いで深い傷を負った俺とメイスンが富士山麓本部に運ばれたのは覚えているだろう? 傷が癒えた後、Iwaki支部が仙台に統合されたのに合わせて、仙台支部に所属することになってな。それで、行方知れずのままだったダンナやミラーのことが気がかりだったし、やっぱり長年住んでたいわき市のことが忘れられなくて、よ。新しく設立されることになったその部署に志願して、この仕事に就いたって訳さね」

メイスンは手に持ったままだったハンディコンピュータをテーブルに置く。「411以降、アクロイヤーの動向がまだ不鮮明だった頃なんだが、いわきは“最重要監視区域”に、本部が指定した。アクロイヤーの謎の行動に対し、下手に刺激を与えず、何をしているのか調査・監視した方が良いだろう、という判断からだ。Iwaki支部がないことも相まって、ひとまずのところは見張るだけにしたわけだ」

マイケルがメイスンを肘でつつく。「メイスン、本部が“最重要監視区域”に指定した、もうひとつの事情も説明してやれよ」

 

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「もうひとつは・・・」メイスンは巨大スクリーンに新しく大きなウィンドウを開く。それは、青い色をした戦闘用人型ロボットがミクロマシンと戦っている場面と思わしき、ノイズの多い不鮮明な映像であった。その大きさは、ロボットマンほどであろうか。

「やはりアクロイヤーの動向がまだ不鮮明だった同じ頃のこと。二回にわたり、Iwaki支部をなんとか再開させようとする動きがなされたことがある。が、Iwaki基地に訪れた仲間たちが、二回ともにこの謎のロボットに妨害された。これも理由は分からないままだが、こいつは我々が何か事を起こそうとしない限りは襲ってこないという、謎の動きを見せている」

マイケルが興奮したように言う。「情報では、こいつ、アクロイヤーとも交戦しているところを目撃されているんだぜ⁈」

マックスは首を傾げた。「アクロイヤーでは・・・ない?」

メイスンが首を振る。「おそらくミクロマンでも・・・ない、と思われる。だから、何者かもわからない得体の知れない存在、しかも我々の持つマシーンを上回るパワーを持っている存在と言うこともあり、こちらサイドの被害をこれ以上拡大させるよりも、まずはこのロボットについても調査・監視した方が良いという事情が出てきた・・・。これらの理由から、本部は“最重要監視区域”に、指定したというわけだ」

黙って話を聞き続けていた綾音が、目を爛々と輝かせた。「味方ではないのかも知れない。けど、敵とも戦う、謎の第三勢力の巨大ロボット兵器⁈ スゲぇ、カッコいいんですがッ!!」

 

「俺たちの所属する班の調べで、アクロイヤーは子供をさらうと言う事件を起こしていることが明るみに出始めた。確たる証拠である誘拐現場に、我々と仲間はこのひと月の間に2度も遭遇したのさ。そして昨日は、――まったくの偶然なんだが、俺たちが通りかかったところで――、綾音がアクロイヤーにたまたま出くわし襲われたところにも遭遇した。

情報は情報のままではなく、謎は謎のままではなくなってきたんだ。やつらは悪巧みを考えてて、何か事を起こそうとしているに違いない。

勿論、既に、上に報告はあげてある」マイケルが富士山麓本部のことであろう、そちらの方角を、腕組みしたままの人差し指でさし示して見せたのだった。

 

「マックス。これで、君が知りたがっていた話は、すべて、だ。・・・どう、思う?」メイスンが、まるで何か期待を寄せているような目でマックスに問う。

マイケルも、まったく同じ目をしていた。

ふたりのことを交互に見て、マックスは当然のようにあっけらかんと答えたのだった。

「勿論、決まってるじゃないか。いわきの子供たちを守るために、平和維持活動を再開する。どうしていくか上の返答待ち? 待ってる必要はない! こちらから早速連絡を入れて、いわきにおけるミクロマンの“新しい使命”に、自らを費やすことを伝えようと思うんだが?」

マイケルが、ヒューッ! と口笛を吹いた。「来ました、来ました、来ましたよ!! ダンナのそのお答え待ってましたよッ!! “いわき調査・監視班”なんてつまんねー仕事、もう飽き飽きしてたんだ。俺たちだけだったとしても、Iwaki支部を再開させようぜ!!」

「異論はない」いつも無表情なメイスンが、珍しく顔をほころばせたのだった。

マックスが言う。「メイスン、すまないが、君のマシーンの新型通信機を指令基地にリンクさせてくれないか。みんなで早速、富士山麓本部に連絡を取ろう」

マイケルとメイスンは親指を立てて、大きく頷いてきたのであった。

 

〔つづく〕