ミクロマン -G線上のアリア-

これはミクロマンの、長い長い物語の、あまたある物語のうちの、ほんのひとつにしか過ぎない。

第5話・新Iwaki支部、始動!<part.2>

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「やっちまいなッ!」デモンブラックのヒステリックな声が砂浜に響き渡る。命令を聞き、アクロ兵たちが、戦斧、戦鎚、槍などの武器を構えてマックス達に詰め寄り始めた。

「配属されて来た早々に、大ピンチじゃないですか!」アリスはアタッチメントベルトで右腕に固定装備している愛用のモバイルブラスターを、訓練通りに破壊光線銃モードに変化させる。そしてセーフティモードを解除しようとして、誤ってベルトの解除ボタンを操作、唯一の武器を地面に落としてしまうのだった。「更に自分でピンチをお招き入れ~」泣き顔になる。

アクロイヤーの出現は想定内だ。みんな西側の崖の方に行って壁を背にしろ! 急げ!」マックスの言葉に瞬時に反応したのは、牽引車サーボマンのウェンディである。「了解です、マックス! みんな早く乗って!」彼女は瞬時にカーモードに変化、牽引車を合体させると仲間を背に乗せたのであった。

「行けと言っても、敵に取り囲まれているぞ! どうすればいいのであるか⁈」グリーンのアイザックが数え切れない敵影にゾッとしながら声を張り上げる。

その時――。「ヒャッホーーーーーッ!!」遥か上空から、嬉々とした雄たけびがこだましてきた。アクロイヤーも、ミクロマンも、全員が空を見上げた。何か落ちてくる。いや、落ちてきているのではない。上空から地面に向け、緑色の飛行物体が物凄いスピードで垂直に突撃してきているのだ。ニュー・ビームトリプラーである! 雄たけびを上げるパイロットは青スーツのマイケル!

 

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ニュー・ビームトリプラーのビームマシンガンが光り輝き、幾筋もの閃光を連続で放ち出した。ミクロマン達のいるところの西側、先ほどマックスが指示した崖までの動線を遮る、見上げるアクロ兵の顔面や脳天、エンジン心臓部に熱線が次々に命中して行く。合計8体のアンドロイド兵が、砂浜に崩れ落ちた。

「いまだ、行け!」マックスの指示に、牽引車は猛スピードで走り出した。上の者は振り落とされないように必死にしがみ付く。

マックスもミクロ・ワイルドザウルスの操縦席に飛び乗った。逃がすものかと周囲のアクロ兵やアクロメカロボが飛び掛かろうとしたその時、ついに地面まで近づいたニュー・ビームトリプラーが機首を上げ、状態を地面すれすれの水平飛行に移し、速さをまったく緩めることなくマックスの方角へと向かい出した。「どけ、どけ、どけーぃ! マイケル様のお通りだーッ!!」緑の機体がミクロ・ワイルドザウルスとの線上にいる敵を次々になぎ倒し、そうして最後にはぶつかるギリギリ寸前でマックスの目と鼻の先を急上昇、再び上空に向かって飛んでいったのである。

「とんだスピード狂だ!」マックスは戦闘車両のアクセルを踏み込みつつ、砂浜に散らばるアクロ兵とアクロメカロボ達に、自慢のミクロ・ガトリング砲の一斉射を浴びせかけたのだった。

 

「何をしているんだい! 一匹も逃がすんじゃないよッ!」流木の枝を左のかぎ爪で叩き折り、黒デモンが大声を張り上げる。アクロ兵の半数が砂浜を駆け出し、崖に向かった新人一行を取り囲んだ。一番大柄なサーボマン・ウェンディは人型に変化、他の者たちを守るようにアクロ兵の前に立ちはだかった。

「オレ、戦闘用でねぇからよぉ、武器なんてもってねぇんだわ。どうすっぺ、どうすっぺ⁈」何故かいわき弁の小型サーボマン・アシモフは、怖さのあまりパニックになっている。

「武器、武器、何か武器はないのッ⁈」自問自答するアリスはポケットから、ハンカチ、ティッシュ、リップ、名刺ホルダー、のど飴を次々と取り出しては放り投げる。彼女の手持ちの武器は先程落としたモバイルブラスターだけ。「激しくピンチレベル上昇中~」半べそをかき出す始末だ。

「メカニックマンの命、工具こそ剣よりも強し、である!」アイザックはアタッチメントベルトで常に右腕前腕部に装着している自慢の万能工具マグネスタックを構えた。いざとなったら目の前に来た敵一体くらいにならば、電撃やバーナー攻撃くらいできる! ・・・と言っても、工具レベルの威力しかないが。

眼前に広がる砂浜のあちこちで、ミクロ・ワイルドザウルスとニュー・ビームトリプラーが、アクロ兵とアクロメカロボと激しく交戦しており、非戦闘員である彼らの救助にはすぐには来れなさそうなのが分かる。

つぶらな瞳をしたウェンディも戦闘型ではない。しかしミクロマンメカとして、新Iwaki支部を任せられた大切なミクロマン達を死なせてしまうわけにはいかない。例え自分が壊れようが破壊されようが、何としてでも守り抜くと強い決意で身構えていたのであった。

 

じわじわと包囲網を狭めてきたアクロ兵が、それぞれの武器の鋭利な先端を一向に向け、一気に突き立ててこようとした! だが、どうしたのだろう。突如として先頭にいた3体がガクンと膝をつき、前のめりに砂浜に倒れこんだのである。見ると、後頭部に熱戦を浴びた赤い穴があり、くすぶっていた。

パシュッ、パシュ、パシュ、と小気味いい単発的で鋭い音がどこかから聞こえる度に、次々とアクロ兵が倒れていく。ものの2、3数秒のことだ。あっという間に1体を残してすべて地面に横たわり動かなくなる。敵味方問わず、その場にいた全員が唖然とした。

パニックになった残りのアクロ兵が、何事が起きているのだと倒れたアンドロイド仲間を慌てふためきながら見る。次に後ろの砂浜の方を確認するのに振り返った瞬間、また鋭い音がしたと思ったら眉間に穴が開き、電子頭脳が破壊されて動きが停止、ゆっくりと崩れ落ちたのだった。

 

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「いったい誰だい⁈」最初は驚いたものの、見当をつけたデモンブラックが東側を見、砂浜、次に草木に囲まれた崖、更にはその上にそびえる潮見台を順に確認していった。彼女の超能力・千里眼が、まるですぐ目の前のことのように、潮見台屋上の落下防止手すりの柱の隙間を拡大視する。ミクロ・アサルトライフル(光子弾仕様。型としては、他にマグネパワー弾、レッドパワー弾仕様も存在する)を構え、狙いを定める赤いスーツのミクロマンがいる! あそこから、神業の狙撃術で1発も外すことなくアクロ兵を瞬間的に次々狙い撃ちしていたのだ。

赤スーツのミクロマン・メイスンは、かつてミクロアース時代、ミクロオリンピックに何度も出場、射撃競技でいくつも金メダルを授与した経験を持つ。彼はあらゆる銃器のエキスパートでもあり、射程距離ギリギリの範囲から針の穴に余裕で銃弾を通すほどの技術力を持っていた。

「超高性能AIの射撃技術にも負ける気がしない」と、彼は口癖の独り言を口にして、失礼な覗き魔に引き金を引いたのだった。

 

察知したデモンブラックは瞬時に身体周囲にバリアを張り、レーザービームをはじき、事なきを得る。彼女は攻撃を受けたことに苛立ちを隠せなくなった。自分たちが、ミクロマン待ち伏せして一網打尽にする罠を仕掛けたはずだった。しかし、これはどうしたことだろう。ミクロマン達はそれを見越して、罠に対する罠を用意していたように見える。そうだ、罠にはまったのは、自分達アクロイヤー勢の方であったのだ・・・!!

デモンブラックが分析した通り、マックス達はアクロイヤーの襲撃を前もって予測、あらゆるパターンの攻撃を想定し、念入りに対策を立てていたのである。

デモンブラックは舌打ちをした。あの赤い狙撃手と言い、砂浜を所狭しと戦い続けているスピード狂の青色と言い、そしてリーダー格らしい黄色のミクロマンも含め、その戦いぶりは彼女が今までに戦って来たミクロマンとは全然異なる。異様なまでに連携が取れている上に、強い、強いのだ。

「やつらは後回し。かくなる上は!」デモンブラックは右往左往している、おそらくは新しい基地か何かの内部を任せられる為に派遣されてきたのであろう非戦闘員と推測される、先刻たどり着いたばかりの面々にボール状の右手を向けたのであった。

「ひとまずは、ザコを先に始末しよう・・・」怪しい七色の微かな光がチラチラと右手ボールの周囲に発生、黒光りする球状の先端の穴に吸い込まれて行く。一点に集束していく光は大きな塊に成長していった。デモンブラック自慢の身体射撃武器ノヴァ・アクロボール砲――それは周囲の負のエネルギーを右手の先端にかき集めて撃ち出し、当たった場所で爆発を引き起こすと言う恐るべき“負の弾丸砲”であった。

怪しげな動きを見せているデモンブラックに、メイスンが次々とレーザーをヒットさせるが、当たるたびにバリアに弾かれてしまっている。

「アッ! 激ヤヴァ!」デモンブラックの動向を目にしたアリスが悲鳴を上げた。ウェンディのそばで頭を押さえる面々。

「死になッ、ザコどもッ!!」黒い悪魔が嘲笑しながら、怪しく七色に滲むノヴァ・アクロボール弾を撃ち出した!!

刹那――ウェンディの目の前に大きなものが駆け付け、身を呈して彼女たちを守ったのである。マックスの操縦する、ミクロ・ワイルドザウルスだった。

すぐ脇に仲間がおり、味方を弾いてしまうことから逆に危なくてバリアを張ることができず、ノヴァ・アクロボール弾の直撃をまともに受ける戦闘車両。操縦席の右わきに設置されている巨大なミクロ・ガトリング砲が盾となり一行を守ったが、操縦席のディスプレイに、損傷レベル大の警告文字と、緑色したミクロ・ガトリング砲のイメージ線図が、赤いダメージ表示線図となり激しく点滅したのだった。

「ちょこまかちょこまかと、鬱陶しいやつだねぇ!!」ミクロ・ワイルドザウルスが動かぬのをいいことに、先ほどより小ぶりのノヴァ弾を次々と連続で撃ち出し戦闘車両に爆発ダメージを与えていく悪魔。

「メイスン、あの黒いやつをどうにかしてくれ。レーザーは当たっても弾かれているようだ⁈」マックスが通信機に叫ぶ。「了解した!」メイスンはライフルを抱えると、屋上の床に停めていたスーパージェット・ライトに飛び乗る。

 

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今 “恋する機械人形” が誕生した

「マックス、大丈夫ですか⁈ あなたも車両もダメージを受けています!!」ウェンディが心配するが、「何とか大丈夫だ!」とマックスは作り笑いで女性型サーボマンを見たのだった。「私のボディは巨大で頑丈です。ここにいる皆さんの身代わりの盾となり、犠牲になります。あなたはここから離れ、あの指揮官らしい黒いデモンタイプを倒してください。そうしなければ、あなたも車両も共に倒れてしまうことになりますよ!」

マックスは爆発に耐えながら、ウェンディに怒鳴った。「身代わりなんて言うもんじゃない! いわきに来た以上は、ミクロマンであろうが、サーボマンであろうが、もう僕の大切な仲間であり友人だ! 自分で考え行動できる君は“魂の宿った者”なんだよ! 生きている我々と同じなんだ! 犠牲になるなんて思うもんじゃない!」

女性サーボマン・ウェンディの電子頭脳が瞬時にマックスの言葉を理解しようとする。この世に生まれてからというもの、沢山のミクロマンと知り合い良くしてもらってきた。メカの開発やメンテナンスの仕事も、彼らと行い問題なくこなしてきていた。機械なので本当の感情というものは知らないが、ミクロマンや人間の言う楽しいとか幸せとか言うものは、こういう状況下にあることを指すのだろうと想像していたものだ。

マックスも思いやりのある優しい人物なのだろうと分析できる。しかし、今までに接してきた者たちと決定的に違うものがあり、感じたことがない不思議なものが彼から感じ取られた。それは、ウェンディのことを“機械の仲間”として見ず、“生物としての仲間”として認識していることだ。マックスの生き物を慈しむ深い思いやりと熱い情熱が込められた“想い”がウェンディにも込められていたのである。

初めて分析し感じたその“想い”が、自分の中に埋め込められている高度なはずのミクロマン・プログラムにも存在していなかったその“想い”が、彼女の中に思いもよらぬ、見知らぬものを知ったショック電流を走らせた。全身の隅々の電子盤と配線にビリリと感じたこともない大ショックが駆け抜け、内蔵されたエンジンが早鐘のように回転数を上げたのだ。

サーボマンの感情は、高度にプログラミングされた機械としての疑似判断・疑似決定にすぎない。しかし、いまウェンディの中を駆け抜け、芽生えたモノは異なっていた。彼女の中に、“新しい何か”を生み出してしまったのである。新しい知識や、プログラムではない。本来であれば、機械が永遠に持ち合わさぬもの。

それは、“恋”であり、“愛”であった――。

 

東側の崖上から紫色の物体が飛び上がり、矢のようにデモンブラックに向かう。メイスンの操縦するスーパージェット・ライトだ。黒い悪魔はメイスンの動きを見逃しはしなかった。ミクロ・ワイルドザウルスへの攻撃をやめて身構える。

メイスンは、バリアを張り巡らせているデモンブラックには、機体両翼先端に搭載されてるビーム砲でも埒が明かないだろうと判断、搭乗したビークルを悪魔に特攻させることにした。「今だ! くたばれアクロイヤー!」叫びながら、本人は飛び降りる。

ビークルがぶつかる寸前、デモンブラックは宙に向けて高く跳躍し、体当たり攻撃を回避したのであった。メイスンの乗り物は砂地に機首をぶつけると反動で一度だけ飛び跳ね、再び砂地に落ちると胴体をこすりつけながら滑り続け、奥にある木々の間に飛び込んで挟まり、ようやくその動きを止める。

さすがの黒い悪魔も、砂浜の中央付近にバランスを崩しながら着地。急いで体勢を立て直そうとした。「な、なにッ⁈ まだ死んでなかったのか⁈」黒い悪魔はさすがにゾッとした。あれだけの攻撃を受けたのに、西の崖下の爆炎の中からミクロ・ワイルドザウルスが飛び出し、デモンブラックに物凄いスピードで向かってくるのが見えたのだ。ボディはデコボコになり、色が剥げ、巨大ミクロ・ガトリング砲も含めて、あちこちから故障の煙を上げている。

亡きミクロマン・マリオンの設計から、頑丈かつどのようなことがあっても内部から暴発はしない作りになっていたが、巨大な砲身はあまりのダメージにもう使い物にはならなくなっていた。マックスは機体操作ディスプレイをタップ、がたつくミクロ・ガトリング砲を接続部からパージした。重い音を立てて砂浜に落ちるマリオンの形見の必殺武器。

「僕はまだやれる!」マックスはフロントライトをビーム砲モードに切り替え、デモンブラックに照準をセット。目の前にたどり着いた瞬間にゼロ距離射撃を行おうと突撃を敢行したのだった。バリアを張る前に超接近して攻撃をすればさすがに・・・。

「ヘルピオーーーンッ!!」デモンブラックが声を張り上げる。次の瞬間、砂浜の中からピンク色をした巨大なハサミ状の手が突き出し、両サイドからミクロ・ワイルドザウルスのボディを掴んで、無理やり動きを止めたのだった。巨体を持ち上げられ、空回りする巨大な4つのタイヤ。

 

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ミクロマンごと、串刺しにしちまうんだよッ!!」戦闘車両を掴んだまま、砂から巨大なアクロモンスター・ヘルピオンが現れる。一見するとサソリのように見えるが、バンパイザー同様、輪郭だけがサソリと言うだけで、姿はエイリアンのように奇形でグロテスクだ。生物のようであり機械的でもあるような、皮膚も皮ではなくプラスティックとか金属のような、とても普通の生き物には思えないモンスターである。

「油断したッ!!」マックスが必死にハンドルやアクセルを操作するが、タイヤは激しく空回りするだけ。アクロモンスターの出現も予測の範囲内であったが、先程からの流れで、彼は完全にデモンブラックに気を取られすぎてしまっていたのだ。

ヘルピオンの、鋸の様な刃が付いた巨大な尾は何でも貫く鋭利な先端を持ち、それはドリルのように回転する機能を持っている。ピンク色の大サソリは女主人の命令に従い、押さえつけていたミクロ・ワイルドザウルスのボディ真下中央に、鋭い針をズブリと突き刺したのであった。

 

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――同時刻。綾音は学校が終わり、いつものように友人数人と帰路についていた。昨日、マックス達が教えてくれた話によると、彼らは今頃、本部から来る新しい仲間を海の方へ迎えに行っているはずである。

一週間前、マイケルとメイスンがやってきたことを知らされた辰巳は「マックスはもう寂しくないね!」と微笑み、場を和やかなものにしてくれた。辰巳は幼いなりに、マックスの心情を察していたのである。そして、更に数名のミクロマン達が近くやってくることも教えられると、「どんどんボクの友達もいっぱいになるねー!!」と大喜びしたものだ。

楽しみなのは綾音も同じで、おそらく時間からして自分が帰宅した後、それほど待たずしてマックス達は新しい仲間を引き連れ戻ってくることだろう。朝から待ち遠しくて仕方がなかったものである。

 

途中で友人たちと別れ、ひとり自分の家への近道である中央町自然公園に入り込む。ここは町中にある、ちょっとした広さを持つ森の中を連想させる作りをした公園だ。木々や草花が奇麗に栽培されており、近所の子供や老人の憩いの場になっている。ただ、今はまだ2月。寒いということもあり、ひと気はほとんどなかったのであった。

公園内の遊歩道をテクテク歩いていると、一匹の黒い子猫がこちらを見て可愛らしくニャーと鳴くのに出くわした。鈴が付いた赤い首輪をつけている。「めっちゃ可愛い~♪」綾音はしゃがみ込んで、手招きした。子猫は首を傾げ、何度か鳴くと、ひょこひょこ可愛らしく歩いて、横にあった木々の間に姿を消してしまう。

「猫ちゃん、どこどこ?」顔をほころばせながら黒い子猫を追いかける綾音。奥の木の陰に子猫の尻尾を認め、こっそりと覗き込もうとしてみる。すると、次の瞬間、「ギャッ!」と喉を潰したような鳴き声を上げて子猫が勢い良く明後日の方角へ向け走り去っていってしまったのだった。

「え? どうしたんだろう・・・?」綾音は不振に思い、木の陰を覗き込んでみる。すると、そこに緑色の爬虫類がいて、目が合ったのであった。

 

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一匹のイグアナだった。いや、イグアナの輪郭をしているだけ、だ。前に綾音を襲ったバンパイザー同様、あくまでも輪郭だけがイグアナと言うだけで、姿は奇形でグロテスクなモンスターである。しかも、大きく膨らんだ両肩にはいくつも穴が開いており、鉛筆大の太さの蛇が顔を覗かせていたのであった。

少女は全身の毛が逆立った。瞬間的に、これがアクロイヤーの手先、量産型ロボの一体であること直感する。そう、まさしくそれはアクロイヤーの作り出したアクロモンスター・量産型イグナイトであったのだ。

 

『磐城綾音、9歳、2011年4月7日誕生、データに該当する対象非検体少女と遭遇、催眠光線にかけ、“探し求める子”であるかどうか検査確認する』

アクロイヤーの手先、量産型イグナイトの電子頭脳がデータを照合。ターゲットの一人として登録されていた少女の一人、綾音であることを知り、怪しくその相貌を真っ赤に光らせた。

 

〔第5話・新Iwaki支部、始動!<part.3>に、つづく〕